【朗読】ある晴れた日に – 瀬戸内晴美 <河村シゲルBun-Gei朗読名作選>

ある晴れた日 に瀬戸内 春見朗読ケリー 白取窓枠に2人の座布団を干しながら夏夜 は上半身を空中に乗り出すようにして深い 息を吸い込ん だ昨夜の雨に洗い上げられたのかさな空は 雲1つなく住みとり気悪いくらい晴れてい た絵花の庭れたく落ち葉の煙が一筋すっと 白く立ち上って いる洋光まで透き通って窓際に枝を伸ばす 胃腸の葉を眩しいほど煌めかせて いる晩Discから初頭にかけてのある日 1年に1度か2度しかない霊 thoughtと万物の住みとるような 海晴の日であっ た思い切って晴れたもの ねまるで北京の秋の空みたい よ中国生まれの夏世は北京で小学校を終え てい た寝が大きな夏世はドテとか雨の日を極端 に嫌 晴れてさえいれば機嫌が いいいいなあこんな晴れた空を見てこんな 日の光を浴びるだけで生きてるのも悪く ないやと思っ ちゃう夏世の言葉に部屋の中で仰向けに ひっくり返ってタバコをふかしていた浩司 はうっと喉を積まなさそうになっ た反射的にが直っていたどうした のうんお茶を くれ夏代はそのまま窓際から離れると低く したラジオの音楽に合わせ腰を振りながら カーテンじきりの奥の水場へ入っていっ た工事はまだ胸の奥に同機の収まらない 感じでもう1度寝そべり じっと目を閉じ た君の悪いほど晴れ上がった初頭の空が あっ たカステラ色のよく手入れされた芝生が 広々と 広がる芝生の真ん中に科学模様を描いて 配置された敷石の上に黒っぽい和服を ほっそりと身につけた藤堂夫人 子が立ってい たスキの上にも芝生の上にも金色の胃腸の 落ち葉がカのように散らばって いるこの界隈の目印に使われる藤堂家の庭 の2本の大飯町の木は金色の炎を 吹き上げるような相関差で真っ青な天空に そり たつ前島さん来てごらん なさい明子は白い顔を振り向け主屋の ベランダに立っている工事を手招きし た工事がのっそりと夫人のそばに近づいて

いくとほらと目で自分の足元を工事に 示す明子のアイロンの聞いた純白の旅にも 今日の洋光はしみいるような白さで輝き 渡っ たあき子の足の周りに数えきれないほどの スメが群がって いる毎日私が餌をやるものだから私の姿 さえ見ればこんなに集まってくるの よあき子はわざと焦らすように口をすぼめ て ちちちとスメの鳴き声を真似ていたがまも なく手のひらの米粒をばらっとその辺り 一面に巻いてやった一瞬無数の小さな米粒 が光を吸い込み高知の目に朝日の中の花火 のようなはさと美しさが広がっ たスズメが忙しげに餌に飛びついていっ た変なのよこのスズメたち藤堂のやる餌に は寄ってこないの 私の足音だけを聞き分けるのかしら ね 多分あの人はよその人間だと思ってるん でしょう ねちらっと素早いまなざしで工事の表情を 救い上げ明子は曖昧な笑い方をし た笑うと目尻一面に浅い小が集まり陶器の ように冷たい明子の白い顔にかって一種の 生めた陰影をつけ た咲夜の今朝を迎えたばかりの工事は扁桃 に詰まっ た月のうちほとんどを東京の愛人の家で 暮らしこの辻道のアトリエのある本たには 滅多に帰らない藤堂の留たに昨夜浩は明子 と2人きりの夜を送ったばかなのであっ た終戦後N代の経済学部に席を置きながら 工事はすでに古い歴史のある美術雑誌を 出しているエッジ者にアルバイトに出てい た謝のようで戦後急激に売り出してきた 我山の流行人藤堂作太郎を知っ た前衛的なエネルギ種の絵を藤堂は器用に 美術評論をもする筆を持ちエチ者では何か と交渉の多い人物であっ た藤堂と妻の明子と愛人の咲子の3人の中 で1番最初に工事があったのが明子だっ たその日エッジ者の美術雑誌に連載中の 藤堂の水出パリ時代の現行の締め切りが の役目はそれをもらってくることにあっ たフフからいる社員が浩二に辻道の藤堂の 家の地図を書いてくれ ながらここにいることめったにないんだが ねちょっと帰った途端足を捻挫したとかで 珍しくここんとこ辻蔵なんだよまあ一度 あの家も覚えておいても悪くないさと言っ た辻道にいない時はどこにいるんですと いう工事の気の聞かない質問にその男は なんだまだ知らないのかとシャンソン歌手

の小山咲子と藤堂の公然のジジを誠治に 疎い浩二に大げさに語ってくれ た浩二が辻道に着いた時藤堂は入れ違いで 東京へ行ってい た初対面の明子は工事のの無駄足を気の毒 がり無骨な工事には到底断りきれないよれ た扱いで玄関脇の小さな雪間に通し た当時では工事などなかなか口に入れる ことのできない放出物資のコーヒーや ケーキでもてなしてくれた固くなった工事 にあき子は学校はどこだとかいつ卒業なの かとかエチ者の待遇でやっていけるなど 真味らしい口調で優しく問いかけてきた 除去する時あちょっとと玄関に工事を 待たしあき子は小さな紙包を持ってきて 工事に与え たそれもまた断りきれない不思議に柔らか な押し付けがましさがあっ た空気に塩の香りのするひっそりと明るい 辻道の屋敷町を歩きながら浩二はその包み を開いてみ たあざそうな茶色の新しい靴下が一足入っ てい たかとの切れていた自分の赤だらけの靴下 を思い浩司は味がさの前に全身が燃え たその日の午後公園寺の小山咲子の家で 工事は藤堂と咲子に会っ た1日のうちに三角関係の3人の男女に 初めて会う経験は若い工事にはやっぱり 刺激の強すぎる気がし た胸の大きくカットされたワンピースを着 た咲子は小柄がルノワールの女のような 豊かな肉付きとバラ色の肌をしてい た高知は咲子を見て改めて辻道の明子の 美しさを認識し直し たいわゆる美人は明子の方だろう浩司は たった1度友達と一緒に新宿の女の部屋へ 上がった経験しか ない女の顔や外見の体つきで女のうちに 秘められた怪しさを測るほどの目がなかっ た2人とも小柄で頭の小さい女だという点 を覗けば工事には2人の女に何の共通点も 見い出せなかっ たその2人が藤堂という1人の男の肉体を 通じて切り離せない絆でつがっている現実 が気味悪く感じられ た辻道へ回ってくれたんだっ て社から電話があったと言って藤堂は工事 に向かい平気な顔で聞い た浩二の方がバの悪い顔をして咲子を見た が咲子も一向に表情を変え ないみすぼらしい学生服の内ポケットに 突っ込んだままの靴下の包みが急に かさばって感じられ工事は1人身を固くし たどこが気に入ったのか藤堂もさこも浩二

に行為を見せいつの間にか浩二はエッジ者 で唯一の藤堂の係りになっ た大概公園寺の咲子の家へ連絡に行けば よかったがそのうち世間が思っているほど 藤堂が辻道の家を留守にしているのでは ない事実を高知は知るようになっ た咲子の演奏旅行の時などはもちろんの こと咲子がずっと強している時でも10日 に3日ほどの割りで藤堂はこまめにに辻道 の家にも帰ってい た仕事の関係者はほとんど公園寺の咲子の 家で面会するため世間は藤堂が本西の明子 を実際以上に打ち捨ててあると信じている ようだっ た浩二は咲子の家のいつも乱雑に取り なかされ活気に満ちた大説まで1つの ソファーに並んだ藤堂と作子を眺めた その同じ目が辻道の家の血1つ浮いてい ない茶の間の 磨き込みなく寄り添った藤堂と明子の完璧 な夫婦の姿をも見るのであっ たコル店のズボにセーターの公園寺の藤堂 と渋い勇気に包まれた辻道の藤堂が何の 矛盾もなく2つの場に優先と座ってい たさこにカーデガンを着せかけてやったり コーヒーに砂糖を入れてやる藤堂とあき子 にタバコの火をつけさせ1回ごとに 取り替える番茶をワシを張った独特の奉じ 機で報じさせる藤堂とは決して2つの顔を 持つ男ではなくどこまでも1人の藤堂なの だ2人の女は同じ程度に自分の目の前に いる藤堂を信じ切ってい た自分の感覚の全てでしっかりと捉え 確かめている藤堂の実在感が女たちを無 条件に暗とさせる風であっ た初めは自分1人他の場所におけるもう 1人の女の顔や声やその女と並んでいる 藤堂の映像に悩まされた工事も次第に3人 の異様な感覚と関係に鳴らされ何の抵抗感 もなくなってき た3人からそれぞれに親愛の気持ちを示さ れるのに平気で3人山陽への答え方をし心 が痛くも痒くもなくなってしまっ た明子に頼まれて公園寺の家へ藤堂の鉱物 の新鮮な干物を届けたり 藤堂に頼まれて銀座の買い物を辻道に届け たりするのもいつの間にか工事の役目に なってい たある日工事が公園寺の咲子の家に行くと 先客が23人あったすでに大せつはタバコ の煙と一息切れで生き生きした馴染み深い 独特の空気に満たされてい た会話の中心はは咲子で咲子の低いが 甘やかな膨らみのある声が人を引きつけず には置かない熱っぽい調子で響いてい

たその電話がねB新聞の不神男なの妻の 言い分という囲み記事を続けているから 来週の分に是非私の意見をくれって言うの よ妻の言い分って奥さんが旦那様に言い たい文句か何かでございますかはそうです 藤堂先生に対して何か一言あら私藤堂の妻 ではございませんのよ藤堂はれきっとした よその旦那様ですわ私と仲良くしてはおり ますけどはあそうですかすみません本当に すみませんなんですか先頃正式に結婚式を あげられたとかデスクが言ったものです からて そんな具合だったの私後でもうなんだか おかしくっておかしくって1人笑って しまったわなるほどねそいつはごシップに いただける客たちは咲子の華やかな笑い声 に合わせて笑ったソファーに頭を持たせ かけ目を半眼にしている藤堂の表情には何 の変化も現れてい ない子の丸い顔はまだ笑いを漂わせその 笑いには何のくっの影もなかった工事1人 がわけもなく赤くなった顔を持て余し そわそわと落ち着かなかったさっき別れて きたばかりの明子の細い後ろ姿をそこだけ に寂しさがこびりついてるような襟足が 生々しい間近さで高知の目先にちらついて き たどこかが狂っている誰が変なのだ工事は 落ち着きのない目でテーブルのタバコに手 を伸ばし た3人の中では明子が1番工事に気を配っ てくれた月に2度くらいは東京へ出て工事 を銀座 呼び出す明子は東京に出ても東京では藤堂 に合わないようであっ た貧しい工事のみがよほど気にかかるのか 靴下やベルトから始まりいつの間にか ズボンや靴まで工事に買って くれるろな物の食べられないその当時工事 のような貧乏な若者は年中空腹を抱えてい たあき子は銀座のレストランへ工事を連れ て行くとさあ何でもお好きなものをお腹 いっぱい食べるのよあなたがもりもり 食べるのを見てるほど気持ちのいいこと ない とメニューを突き出してくれる工事も最初 は固くなって遠慮してい た物を食べるのも快楽の1つなら人が物を 食べるのを見るのも快楽の1つなのよあこ の言葉に甘え浩二はこの月に2度の豪華な 時間を次第に響楽する術を覚え込ま た工事に一通りのみが整った頃明子は浩司 をバーに連れて行ってくれたりキャバレー に案内してくれたりし たどこに行っても上品で

ひやかすとしていて若い工事などは圧倒さ れるような貫禄があったそんな時工事は 明子の全身が銀座のバーで鳴らした女だっ たという噂を初めて思い出したりし た今時の若い人がダンスくらいを覚えて おかなくっちゃダンスの受行料まで出して くれ半ば強制的に習わせられましたあき子 に案内され工事はホールへも度々出入り するようになっ た踊る明子は空気のように軽いそのくせ 踊り終わった後には女体の柔らかさとか 粘り強さが工事の皮膚全体に張り付いてい 奇妙な感触が残っ たそんな日踊っている時は決して感じない のに別れた後浩二は密かな不倫を犯してき たような全身の行りを抑えることができ なかっ た夢に明子をみだに犯すことがあった浩二 はアミドの自分の寝覚めに深い恥を感じ た現実の明子にあって 母親のような行き届いた行為を示されると 自分の密かな妄想がバカバカしくなって くる辻郎と前島と少々臭いんじゃねえか ようやくそんな噂が車内に登り始めても 浩司はひしてくださいよおふみたいな年 ですよ藤堂夫人はうぶいて行ってのける だけよれてきてい たいつかがもえ工事はそのままエチ者に 正式の社員として滑り込んでいたの だ何度そういう2人だけの機会を重ねても 明子の話題の中には決して咲子のことが 一言も入ってこ ない無関心なのか完全な無視なのかそれは それとして工事には足子のというより女の 1つの周年の変形を見るよで時には気味が 悪いくらいであっ た前島さん若い恋人はあるんでしょ突然の ようにあこに惹かれてそれが反日ともい ないんですよおかしいな自分でもそう言わ れると変だと思いますがね若い子って パサパサしていてつまんないや 本当子はすっと目を 工事の表情の裏を見透かすように見つめて き た良くない傾向ね私のようなおばあさんの 遊び相手をあんまりさせたもんだから行け なかったかしらアブノーマルになって そんなことありませんよ絶対に僕はい たってノーマルですよへいへいボンボが 理想なんだそのうち健康な単純な女の子と 見合い結婚してもりもり子供を産ませて ごく普通の家庭を作ります よそうよそれに限る わあき子がいつになく気のない冷たな口調 で打ち切ったすると工事は今口ばした自分

の言葉が空虚で何の根拠もない上ことの ように思われ急に心がさばとじくなっ たあの晴れた朝を足子と2人で初めて一緒 に迎えたのはそうした歳月が3年近く流れ た後だっ た前日いつものように銀座から呼び出され 浩二は明子と落ち合っ た今日は私たちの記念日なの付き合って ちょうだい ねいつもより派手りのあき子がこれもいつ もより生めて見える笑い方をしたとっさ 浩司は私たちの複数の意味が誰と誰を刺す のか分からずドキまきし た結婚記念日ってほどのものじゃなくあの 人と初めて京都へ行ってそうなった日の 記念日女ってめめしいわ ね浩司は初めての人を見るように目の前の 明子を見 たどこかいつものさらさらした明子と違う 感じだっ た藤堂は咲子の北海道公園について自分の 射線の仕事を兼ねて東京にもいないのを 工事も知ってい た今日はうんとゴージャスなコースにし ましょう少し勝手の違う1億ターブ根々の 高い感じの秋子に引き回された形であっ た工事は並木通りのフランス料理店でで いわゆる記念日の祝園につきバーを23元 回った後赤坂のキャバレへ入っ たその世の明子の体はいつもの霞のような 軽さではなく全身が無限の言葉を囁き 続ける不思議な持ち盛りのする物体であっ たどんなかかな接触にも浩は明子の体から 悩ましい誘いを受け23局続けに踊るうち 聖痕突きはてた思いになっ た耐えきれず夢中であこのすべすべした 白い耳に噛みついてしまった激しい身を1 つしただけであき子はじっと痛さに耐える ように息を詰めた工事の方が慌てて唇を 離し た一言も言葉はかわさなかったけれども それからの踊りはもう2人の間の無言の 馴れ合いだったそれはすでに踊っているの ではなかっ た帰りましょうと突然明子が言った フロアーを出る時明子は敷物につまづき 転びそうになったいつもは新橋で明子の 乗った電車を見送る習慣だったが明子は車 を呼び止めた送ってってくださるわね時子 は田舎へ報じで帰っていないの よ時子はお手伝いの名前だ工事は黙って車 に乗り込ん だ社中でも明子は一言も口を聞か ないぐったりしてシートに頭を押し付け 身動きもしなかっ

た気分が悪いんですか目を閉じたまま首を 振った露骨にうるさいという表情であっ た浩二も目を閉じてみ た今夜の濃密な時間がずっしりとした 手応えの重さで改めて工事の全感触に蘇っ てき たなるようになる さ藤堂と咲子の顔を重ねて思い浮かべ浩司 は頭を振っ た家に着いた瞬間から明子はつき物の落ち たようなさえざえした表情に帰っ た履きした動作でここに来てためらって いる工事を生じ入れ藤堂家独特の奉じ茶を 入れ離れの客間に工事のための寝床をこえ てき た夜は怖いほど静かでしょこの 辺り海の音もどかした風の具合では はっきり聞こえる番もある わ工事は巨したように急に疲れが出て口も 聞きたくなかっ たあき子の真意が分からない不満が どす黒く胸にくすぶって くるここまで連れてきてどうするというの だ自分が今夜1匹の獣になったら明子は どうだというの だ不定な夫にしろとにかく夫のルスにお 手伝いさえルスの家に若い男を引きずり こんだ事実は明子のこれまでの定説に消し がい汚点をつけたはずだそのことの重大さ に今の明子は思い当たっていないのか体の 中を涼しい風でも吹き抜けているような妙 に爽やかな清潔な表情をしているのであっ た中途半端なすっきりしない気持ちのまま 事はは離れの寝室に行っ た雨が降り出したらしく陰気な雨音が次第 に音を高め辺りを包んでき た明子がしんでくるのではないかという 期待から抜けきれず長い間浩司は雨音の中 に耳を済ませていたそのくせ自分からは 起き上がるのも気だるい疲労が染み出して い たいつの間にか単調な雨音の中に工事は 健康な水間に引き込まれてしまっ た夢にも明子は現れなかっ たその翌朝であっ た君の悪いほど晴れ上がった初頭の空を 背景に芝生の真ん中に立つ明子がベランダ の工事を呼ん だ明子は村くるスに米粒をばらまきながら むじゃきな明るいあしい表情を称えてい たこのスメたちは藤堂をよその人と思って いるのかもしれないと言った後の微妙な 表情を覗けば明子は全身霊Earthとし た感じだっ た吸い込まれるような光に満ちた青空を

見上げると高知の頭もすっきり現れてくる 昨日のことが妙に遠い出来事だった気もし て くる結局何事もなく2人の朝を迎えたこと が良かったのだと工事も急に全身が軽く なり思いきり大きく手を広げて深呼吸し た ああ本当にいいお 天気こんな美しい日の光をいっぱいに浴び ているだけで生きているって感じ ね独り言のように明子が言っ た目は燃えさかるような大飯町の金色の炎 に注がれてい た荒な朝日が白い明子の方を高知の間近に さらし たつるりとした肌の下から追いの にじみ出る物な皮膚であった その 晩明子 は風呂場でガス自殺を遂げ たあき子が最後の夜を1つ家で眠り最後の 朝日を2に並んで浴びたのが自分なのだと いう秘密のおしさで浩二は気めいっ た北海道から呼び戻された藤堂の思いない という談話や公然の三角関係が新聞や雑誌 取り上げられたが結局明子が長い間苦しめ られていたノイローゼが死因となりいつの 間にか明子の死は世間の記憶から忘れられ た明子の死によって自然藤堂と咲子の結婚 は成立したがその頃から藤堂の絵は時代 にの残されていっ た絵の人気の衰退とともに藤堂の現行も 売行きが落ちうりげなジャーナリズムは 次第に藤堂の名を忘れ たテレビの不及に連れてシャンソン歌手も 排出した年齢的な盛りを過ぎた小山咲子の 顔がテレビに現れることはほとんどなかっ た今は誰はかることもない結婚生活をして いるはずの咲子がそれから45年後睡眠罪 で自殺未遂をしたこのニュースを聞いた時 浩二は結婚して親になってい たエチ者は大変わりしていた工事は 引き続いて第2エチ者に残り編集次長の 椅子についている妻の早苗は下宿の娘で 出戻りの未亡人だった工事より3年上だが 大人しく家持ち上図が鳥家で思いがけない ほど嫉妬心の強いのを覗けば工事には 取り立てて不平のない女であっ た女ってものは全くわからないなお前の ような病的な焼きもちも始末に悪いけれど 全然焼かないふりをしている女たってのも 君の悪いものだよさこの自殺ミの噂を聞い た晩珍しく浩二は口数が多くなって妻に 言ったへえそんな女をどこで知っ てらっしゃるのもうすでに目を嫉妬で光ら

せている妻にしまったと思いながら浩二は あき子の最後の日だけを覗いて藤堂と2人 の女の長い三角関係を話して聞かせ たそんなの信じられないわ焼かないなんて 愛情がないからよなんて不潔な人たち でしょうその奥さんだってシャンソン歌手 だって黙っているだけに胸にモモが いっぱい詰まってて自殺なんかするんだわ おおやだ同時に2人で1人の男を共有する なんて気持ちが悪いお前なら見つけたら 最後相手を殺すかええそうよ相手を殺して 自分も死んでやるわ俺は殺さないのか回て おいて苦しめてやるのしばらく黙っていた さないが突然身をするよせねえあんたその 奥さんと会ったんじゃないバカな絶対に ないよふーんそうかしらでもあんた私と 結婚する前私が年のこと気にしたら僕は 年上の女でないと安心できないんだって 言ったわよ男って初めての女の印象が一生 ついて回るって何かでよだよせよ死人に まで焼いてたんじゃキがないじゃない かそう言いながらこじはキシな明子の体を 思い出し奇妙な血の騒ぎを覚えてき た早苗を始めもうあれから何人となく重ね ているその場その場の常時の相手の女たち どの体よりも抱いたことのないあこの体が 隅々までしい鮮明さで思いがける気がする のはどうしたことなん だろう夢で犯した明子の白者のような しなやかな肉体の記憶ほど工事の強欲を 怪してくれる女の体があっただろう か今更のようにあのたった1夜の機械を なぜ自分から動かなかったのだろうと工事 は自分が腹正しかっ た夏世とそうなったのはこの半年ほどの間 である夏夜は銀座裏の小さなヶに務めて いる画学生崩れでがろに席を置きながら 結構自分の手で絵をバイバし相当の収入を 得てい た痩せて骨っぽく取り立てて目を引く女で はなかったけれど表情の多い目がいつでも 意欲的に燃えてい たあるパリ帰りの女流画の歓迎パーティー で知り合ったその後ばったり街角であった のを機会に何度かバーへ一緒に行ったり 映画を見たりし た前島さんの奥さんって有名な焼きもち 焼きなんですって2度目に会った時そんな ことをぬけぬけ言う女でどこか男の子の ようなサバサバしたところがあっ た何度目かのデートで初めて2人で踊りに 行った浩二は夏用を抱いてフロアーに滑り 出した途端ぎょっとして足を持ちでさせた 失礼慌てて踏みなしたが工事は異様なほど 赤面していた軽くて体をつつけているかい

ないかわからないような警戒さの中から雲 の糸のような粘着力が絡みついて くるその踊り方はの体をありありと 思い出させてき た浩二はいつも和服の帯の傘を腕に感じた 子の代わりにくびれた細越が薄い ジャージーの上からそのまま腕に吸いつく 夏世の腰を抱きながら女が明子としか思え なくなっていた工事の踊りは次第に情緒を 込め足子の最後の夜のおりの生臭さをめも なく再現していった夏世は工事のリードに 君の悪いくらい素直についてくるどこまで も溺れこむ追いて方であっ たその夜2人はホテルに行っ た夢に描いた明子の体を浩二は現実の明り の下でドラなほど堪能し た底のない泉のように夏世の細い体は豊か に溢れ続け工事に答え たベッドを離れると夏世は相変わらず サバサバした動作だっ た昼間の夏世は時には浩二が秋へ帰り物 足りなく思うほどケロリとしていた夏世の 申し出で2人は夏世の下宿で会うように なっ たそうなっても夏世は別に気持ちで燃えて くるでもなく1ヶ月に1度か2度の機械を 工事の都合次第で淡々と迎えとの中では 別人のようになっ た外面の夏世のそっけなさと男まりの仕事 ぶりから工事との常時は固形なほど週に 分からないで続いた敏感な早苗も今度 ばかりはまだ気づいてい ない1人が夏世の そこしれぬ淵に溺れこんでいっ た夏よさえその木なら思いきって早苗と 別れ2人だけの生活を始めてもいいと考え てい たどんなに快楽が深くても早苗の嫉妬恐れ 決して止まらなかった浩司が昨夜初めて 夏世の部屋で夜を明かしたの だ夜中から激しくなっ雨の音が変りなく ない理由になった夏世は別に逆らいもせず そうかと言ってとりわけ嬉しい表情もせず すっぽりと浩二の胸の中に小さくした体を 滑り込ませ安心しきった寝顔であっ た工事の方が眠れず明け方まで様々な勝手 な取り越し苦労で目が冴えていたそして 今朝123年前と同じような気味悪いほど 晴れ上がった空が2人の窓に広がっていた そして夏代があの朝の明子と同じことを口 にしたの だ水場でことこと茶碗やスプーンを揃える 音がする夜間が歌を歌い出し た ねえの明るくくったくない声が呼びかけ

たこういうお天気1年に1度か2度ね改正 と言ったってこう100%の改正ってのは 珍しいわ夏世が言いながら紅茶の盆を運ん でき た私ねこんなお天気の日だとなんでも スカっと言える気になるのよこの前から 言うつもりでいたんだけど私たちもう別れ ない ううんうんあなたが嫌になったとかどうっ て言うんじゃないのでも他の男が結婚し てくれって言うのよその話に気が動いたの ギブ&テイクだったでしょとてもいい 思い出だったわ多分私忘れなくって よ夏世の生き生きした飛びの目の中に 目まいの思想に晴れった空が映っている 夏世がねえと首をかげると胃腸の金色が その目に燃え移っ た浩二の頭は不思議な平安 にしんと満たされてき た 選び抜かれたとっておきの名作朗読文芸集 文芸ホラースリラーサイコ サスペンス人生に潜むミステリアスな空間 の数々おすすめは こちらよろしかったらチャンネル登録 ボタンを押してください

#文学 #朗読 #瀬戸内晴美
1961年3月 小説新潮に掲載された作品。
当時から絶対に締切りに遅れないと言わ
れていた……と瀬戸内晴美を良く知る
作家の長尾玲子さん。

また良く口にした言葉が、女が次の高みに
上がる為には、スプリングボードが必要……
瀬戸内の作品には、スプリングボート
役の男が、しばしば登場する。

@名作朗読チャンネルBun-Gei

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瀬戸内寂聴(晴美) 1922年~2021年

徳島県徳島市生まれ。
東京女子大学国語専攻部 学位は文学士。
天台宗 尼僧 僧位は大僧正。
生きることは愛することを、座右の銘に。
数多の人生遍歴を重ね今も尚、前を見続けている姿勢は感動的だ。
作家としても、これまで多数の著作により多くの文学賞を受賞。
いち早く「ケータイ小説」のジャンルにも進出し、
新境地へのチャレンジ精神は旺盛そのものだ。

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ケリー・シラトリ

1961年 東京生まれ。
メディアクリエーター・女優・作家

幼少期より劇団に所属、子役として舞台等で活躍。
文化放送アナウンススクール卒業。
学生時代はラジオ・TV等放送局でアシスタントとして活躍。
海外生活に長け文筆家としてコラム・エッセイなど多数掲載。
FM局MC、司会業、朗読会等多数。
パロディ、バラエティ、ミステリーまでこなす実力派女優。
現在は作家・シナリオライター・放送作家として幅広く活躍中。

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