【朗読】不貞な貞女 – 瀬戸内晴美 <河村シゲルBun-Gei朗読名作選>

不定な 定助瀬戸内 春見朗読ケリー しと出勤の支度をして私は夫の幸介の部屋 のドアを押し たベッドから塔のネスに移って朝の新聞を 見ていたは結のいい方を 軽く首を回してき た眠りたりた爽やかな目の色をしてい たとても朝のこんなこすを見て病人なると 思えるものではなかっ たけれども幸介はもう5 年つまり私たちが結婚して1年目から発病 し病床についた記事であった 似合うよその 髪こすは目を細め絵を見るような目つきを し私の髪型を点検し たこの髪はこすが書いて見せた通りに私が 工夫して言いあげたものであっ た そう私は介のネイスのそばでくるくる つま先で回って 見せる八方から私の姿を幸介の目に楽しま せるため だ 朝私は普通の主婦よりもずっと念入りな 化粧を する遊び半分の我狼への勤めのためでは なく5年間病床にある幸介の朝の気分を 少しでも 明るく華やいだものにしてやり たい静かな心がけからであっ た健康な頃絵の好きだった幸介は退屈 しのぎに髪型や服のデザインをスケッチし ておいて自分の衣装を私の上に生かして みるのが楽しみの1つになってい たああそうだその曲げにとても合う スペインぐが母さんのとろにあるはずだよ 頂いて ごらん幸介は言葉より早く呼び輪をしてい た女中の千代が幸介の言葉を聞いて降りる とすぐ折り返しに姑のマが入ってき たに似て色の大柄な姑は60になっている がまだ余りにしか見え ないスペイン串ってこの こと姑とは機嫌のいい笑顔で幸介と私の 寄り添っているそばへやってきた ええ別のがあったでしょうあそれそれこの 紙にどう かしらぴったりですよ今朝はまたすっきり 大串が上がったこと 姑とは霧の神道具入れからエキゾチックな スペイン串を取り出し自分の手で私の紙に さしてくれるの だそこでまた私は夫と姑との前でくるくる

と回って みるでは行ってまいり ます私は姑との前も構わず幸介の首に身を かめその白い広い額に軽い口付けをして 部屋を出 た世間には1人息を持った姑との嫁いりと いう言葉があるが佐わけにおける限りは その常識は通用しなかっ た姑とは幸介を猫かいがりするのと同じ 愛情の細やかさで嫁の私を可いがってい た私が幸介に触れ幸介を相leaveする のを見ると姑は露骨に喜びの表情を荒にし たこの町では文化通りと呼ばれているエス 通りのエスガロへ私は毎日出勤 する町のものは誰でも私がこの町で1にと 指おられる 法家のコの妻であることを知って いる私の務めを夕刊マダムのお道楽くらい にしか見ていなかっ た事実それに違いなかったがこのがろの 死本は幸介が出しているもので私は昨年 から幸介の進めでここへ出ることになった の だ僕は 終日かな子 そばに引きつけて起きたいけどかな子が僕 のそばで色が汗た花みたいにしぼんでいく のを見るのはたまらないん だこんな不自然な暮らしがかな子から知ら ず知らず若さを立ちitselfれにして いるんだよかな子は外へ出てもっと 生き生きして僕のそばに帰ってきておくれ 僕ははかな子から外の風や街の匂いを かぎ取りせてほしいの だ幸介の考えで私はそれまで一時も離れた ことのない夫のそばから解放されるように なっ たエスガローで模様している土曜界という 油の研究会へ出席するよう進めたのも幸介 であっ た 私は6年前音楽会で幸介に認められ混成さ れて佐へ嫁いでき た私の里も町では古い家柄の医者だけれど 資産の点では佐わけとは比較にならなかっ たいわば私は玉のこに乗ったと世間では噂 された らしい幸介との何の影もない幸福な日は 結婚1年後までであっ た私はといですぐ秋彦を見ももっ た里え秋彦を海に帰っていた留守幸介の第 1回の吐血があっ た幸介を診察した私の父は私に密かに告げ た本当のことを知った方がいいと思うの だ介君の病気は悪性で骨も切れないし治療

がやりがいの だかわいそうだが一生普通の体には帰ら ないと見て いい 特に夫婦生活はいけないこんなことは進め たくないがもし金子が望むなら今のうちに 別れてしまってもいいと私は考えているん だ よ私はその 世こすの哀れな運命を思い出してはなき 泣き止んではまた泣き始め た私はこすと別れるなど考えることもでき なかった結婚前恋の思い出もない私は介が 生まれて 初めて愛を注いだ男であっ た幸介は丸2年父の病院で療養生活に入っ た私は義彦を姑に預け病院の公式に 付き添って暮らし た介と私が3年ぶりで佐へ帰った時彦は 私たちを見て人見知りして泣き姑の胸に しがみついていっ た私は秋彦は姑とに取られ幸介は病魔に 奪われ吹きさらしの風にさらされている ような孤独な思いに包まれてき た土曜会で私の入た画像をSガロの主人の 立田はガロの商品の絵の中に交えて展覧し てしまっ た嫌ですわこんなの恥ずかしいじゃあり ませんか私の講義をニヤニヤ聞き流して奥 さんまあ私に任せておいてくださいもし これに素晴らしい根がついたらどうなさい ますおりになりますか 冗談 ばっかり私は立田の気まぐれが始まったと 問題にもしなかっ たけれどもくんだ額縁で飾りがろの壁の中 に並べてみると私のその絵が思ったより 見栄がしているのがやはり私は嬉しかっ たその絵に私は私なりの愛着も感じてい たこれは実的なものでなく黄色を貴重にし た単純化された私の横顔だっ た毎朝変わった髪型に言いあげ2日と同じ 着物を着たことがなく舞台化粧のように 派手な恋化粧をしている実物の私とは およそ似てもにつかぬ女の顔であっ た心持ち顎をあげ細い首を伸ばした黄色に 塗りつぶされたその私は何かを待ち望む ように軽く唇を開き目を閉じていた立田は キスの前で台をつけましょうかなど私の嫌 がるのを見越して面白がってからかっ たその顔にしいて文学的な台をつけようと 言われる なら木がしかないと私は思ってい た人には見せない私の心の中の上と寂しさ を私は私の未熟な絵筆に託したつもりで

あっ たその日の午後私がちょうど誰もい なくなったがろの奥の椅子にぼんやりかけ ているところへ1人の男がふらりと入って きた ひどく背の高い印象だけが私に残っ た新刊の美術雑誌に眺め入っていた私は ふと男の姿がいつまでも一所から動かない のに気がつい た首を回して男の足を釘付けにした絵を見 た私は思わず恥ずかしさで声をあげそうに なっ たそれは今朝 立田が面白半分に掲げておいた私の顔の前 だった から私の気配が相手に伝わったのか いきなり男が振り向い た男の挑むような激しい目の色に一瞬 不思議な身が体の奥を貫いた色の浅黒い その男の体は全身が鋼のような鋭い感じが した あなたですねこの顔は男はある驚きの こもった声で呟い た男は無遠慮にまきもせず私を眺めた私も なぜだかその男の目を大胆に見つめかして い たどうしたの疲れた顔をしてるじゃない かこすは帰宅の挨拶を告げに行った私の手 を取りじっと顔色を見つめ たなんでもないのよと笑い返しとした私の 方がふっとこり苦しそうに歪むのが感じ られ た何かがろで嫌なことでもあったのか いこの時私は結婚以来初めて異常に英敏な 何1つ見逃さず感じ取ってしまう の神経をうるさいと思う自分に驚いてい たいいえなんでもないのただ今日は あんまり暑く て私はまたこすに初めて嘘をつい たこれまでの私はガロから帰れば何より まず介の部屋にやってきてがろでの出来事 をもらさず話すのが日になってい たもう6年も社会の風に吹かれない幸介は 私の話をラジオよりもテレビよりも楽しみ に待ってい たその日に限り私は我狼であった背の高い 男のことを幸介に話さなかっ た何かしら私の内部の暗いところにうめえ ている本能のようなものが妨げ た幸介にその男の強烈な印象を吐き出して しまわなかったせいであろうか私はその世 ほとんど 一晩中激しい目をした男に追われ続けて いる夢に苦しめられ た目が覚めると全身にびっしり汗をしらせ

ていた まだ胸がおしくざわめいてい た見慣れた自分の寝室を怯えた目で見回し た優雅と贅沢がなめるように私を取り巻い て いるカーテンの色から壁の絵まで ことごとくは私のために選んでくれたもの であっ た何1つ足りないもののない豊かな華やか な女の 部屋その部屋の快適なベッドに美しい雷を まとって寝ながら私は心に雪が降り積もっ ているような寂しさと冷たさに閉ざされて い た翌日がろの壁からは私の顔が消えていた あらあの絵は奥さんだから言わないこっ じゃないあの絵が売れたんですよ私あの絵 を売るとは言いませんよさあそうそう来る だろうと思ったんだ実はね書いても多分 売ってくれないんじゃないかと言うんです よでもどうしても欲しいんだそうですそれ でですね私としましてもいい客筋だもんで 無限に断れないのでし て結局立田は売るにしろ断るにしろ一応 買手に会ってくれないかというのであった その買手は昨日のあの男に違いないとなぜ か私は直感し たその方なんてお名前ですのあ申し遅れて いましたそれが上木高屋なんです よ彼が上木高屋なの かその名は私の目や耳に初めてではなかっ たここ半月ばかりほとんど連日彼の名は町 の新聞に現れてい た公園に新しく野外音楽道が建設されそれ を設計するのが今売り出しの新身建築家植 高屋なのであっ た彼は建物のイメージをまとめるため東京 からこの町を訪れていた約2ヶ月滞在する のと言われてい たそういえばあの激しい目の堀の深い顔は 何度か新聞や美術雑誌のグラビアで見た顔 に違いなかっ た嫌ですわなおさらそんな方に変われる なんてでもねやっぱり相手は一流の芸術家 ですからねちゃんとあの絵の良さを見抜い てくれたんですよ作者としちゃそう悪い話 でもない でしょう立田は上木高屋がこのがろで絵を 買ったことがちょっとした宣伝になると 思いなんとかして私に承知させようと大変 な力の入れ方なん だ結局私はその日の午後上木達也のお茶の 正体を立田に承諾させられてしまっ た上木高谷が投宿している観光ホテルの ロビーで私は彼に会っ

たいらしていただけないかととても心配 だったんですよ彼の笑顔が 幼っぽかったので私の固くなっていた心は まずほぐされ た彼の目の中には昨日はなかった物柔らか な光があっ た包み込むようなそのまなざしを受け止め ていると不に私に咲夜の夢が帰って くる自分の首筋に血が登るのが感じられた 私はうえまつ毛を伏せ彼の目から私の目を 隠し た町の印象や仕事の予定など率直な口調で 何気なく彼は語っ た取りつくわない彼の人柄が自然に私に 伝わり私は次第に心がほぐれていっ た彼の話に短い愛日よたり優しく笑い返し たりしているうち私はいつの間にか心を 柔らかな羽毛で撫でられているような心よ さに浸ってい たようやくあの絵をなるべくなら譲って ほしいと要件が出され私は簡単に夫に相談 してお返事をすると答えた古風なこの答え が彼をひどく驚かせたらしいのが分かっ た彼のその様子が私にこの1時間ばかり 完全に自分が人妻なのを忘れていたのに 気づかせ た自分のそんな状態が今度は私を驚かせ た私たちは互いに違った意味での驚きに 満ちた目で一瞬目を見かわした 初めて彼に見つめられた瞬間のあの身震い するような不思議な感覚が私の奥深い ところを突き通していっ たその日のうちにタタを通じて絵を売るの を断ってもらい私は上木孝也に一切合う まいと自分に誓ったそう決めながら私は なぜそんなに無きになって彼との交渉を 立つ用意をしたり決心したりするのかと 自分を疑っ たこの疑問は私に帰って上木高屋に惹かれ ている自分の心にかわせてしまったのだ私 は激しい老廃と混乱に 陥り自分の足元の地が崩れていく心細さに 囚われた 帰宅して夫に上木高屋にあったこと絵を 売るのを断ったこと簡単に話したその話に 私は何1つ嘘を交えなかったけれどもその 話は上木孝也と私の会見の真実を何1つ 伝えてはいなかっ たそういう話し方もあるのに私は気がつい た私の密やかな誓いや決心にも変わらず上 孝也と私はその後急速に親しくなっていっ た私が彼に危ういと思えば思うほど私は 至るところで偶然のように彼に出会って しまうのであっ た街角で喫茶店でデパートで

それにがろへ来る彼を拒む理由が私に あろうはずがなかっ たその後上木孝也はどうし てる夫は時折り新聞に彼の名ど見ると 思い出して私に 尋ねる時々見かけましてよがろへも来てる ようですし嘘ではないけれど真実でもない 最初上木孝也のことを夫に告げた時と同じ 話の仕方がその後もずっと私の方法になっ てい たまさかその町 で上木高屋に出会おうとは思わなかっ た林間の大町のある実業家の家へ絵を届け に行っての帰りであっ た町は私の住む町から記者で1時間ばかり のところであった検査会の山を超える時 小さなトンネルを10いくつもくぐるので そこへ行くたにちょっとした旅をしたよう な気分になるの だ私の町では私は有名な双方家の嫁であり 6年の間病夫に使える有名な定助であっ たエ町で選び出したミセスSでもあった どこへ行っても誰にあっても尊敬と愛情に 満ちたまなざしで迎えられた私の着物の柄 私の髪飾り1つもその日のうちに街中に 知れ渡って しまうけれどもここ大町では違った誰も私 を知らない誰も私を振り返らない解放され たのびのびした気分で私は大町の街角を 横切ってい た佐川さん目の前に当選behするように 両手を広げた男が上木高だった私は不に 込み上げてくる嬉しさを懐かしさの表情を よう暇がなかっ たなんて楽しそうな顔していいるんです まるで違う人みたいに発達としていますね 高屋のそんな言葉にも私は明るい笑い声で 答えた誘われるまま喫茶店に入る時も何の ためらいも感じなかっ た彼に今日半日のプランを立てさせ食べ物 や飲み物を選ばせ私はただたっぷりと温か な海に漂ってればいい白い 船彼に素直に従い彼の見せてくれる パノラマに無邪気に目を見張ればいいでは ないかここは誰も知らない町なの だ私は彼に進められ入ったことのないバー へ入り口にしたことのない甘いカクテル さえ飲んだ踊ってみます か涼しそうな人工滝がが壁いっぱいに 青白い光をあげて流れているダスホールの 前でも私は穏やかな微笑みを浮かべ素直に 頷いた外には明るい夏の洋光が輝いていた がホールの中は秋の病気と春の夜の怪しさ が立ち込めてい た丸天井いっぱい人口の星がまたいている

下で私は生まれて初めて夫以外の男の胸に 引き寄せられ た私は急に波打つ心を悟られはしまいかと 恥じ た素朴なと言いたいほどの上木高屋の踊り は優雅でみのなしはデリケートだっ た巧なリードでいつの間にか私の緊張した 手足はなめられ体が柔らかく潤ってき た次から次へ絶しに甘い曲や情熱的な曲が 私たちを追い回し引きずりこみ漂わせ た気がついた時私は上木高屋に胸は愚か 体中をぴったり触れさせ頬は頬についてい たまきすると私のまつ毛の先が彼の頬を くすぐるのが私に分かっ た私の内部に緩やかに打つ波のうりと高屋 の内部にといてくる波のうりが次第に 溶け合う私の足は高屋の足であり高の胸は 私の胸になり私は次第に自分と彼の見分が つかなくなってきらびやかな甲骨の中に 沈み込んでいっ た私はすでに 柔らかく開き切りどんなかかな美風の誘い にも身を振りこぼそとする仮であっ たそのけ駅に帰りついた私は その駅を立っていった私とは違う生き物に なってい た悔いはなかった夫の前に立った時かかな 私の不安や器具を裏切って私は頭の先から 足のつま先まで夫への優しさに溢れる妻に なっていた私は咲こだ口調で遠足から帰っ た子供のように早に王での話をした上木 孝也とのことだけ は取りのけ て私は喋っている自分の眉が晴れやかに 開き瞳が輝いているのが分かった私の和力 の反射で夫の皮膚にも目の中にも水々しい ものが染みはっていくのを私は冷静に観察 してい たなんでもないことなのだほらこんなに なんでもないことなの だ私は爪の先々まで中束し道溢れゆったり と眠気に襲われてい た上孝也との声が始まってから私には人生 が無数の扉を両側に連ねた無限に長い廊下 のような映像にな た豊かな人生を送る意味はその扉の数を どれだけたくさん開けることができたかと いうことではないだろうか扉の中に必ず しも美しいもの心よいものばかりが満たさ れているとは限らないかもしれないそれで も今となっては私はそんな不安に恐れては いなかった扉を開く鍵のことごとくを 探し出し見つからない時は体ごとぶつかっ て破りこしてもその扉の中を覗いてみたい 上木孝也は私の描いた黄色い私の顔につい

てこう言っ た見た途端助けてくれってあの顔に叫ばれ たような気がしたんだよ溺れかかったもの が誰もいない空へ向かって手を突き出した 時の顔だひもじかったのよあの顔は私の中 のひもじさが無意識に出ていたから嫌だっ た の何がひもじかったの何もかもよ生きて いくためにパンの他に食べなければなら ないいろんなものその 全て今はどうな のあなたがいるわ私はの腰に両手を回し 親しみ深くなったその肩に頭を預けるの だっ たあの日からもうすでに私たちは何回と なく歩引きを重ねてい た最初の偶然が私たちに知恵を授け王子の 山懐にある小さなホテルが私たちの部屋に なってい たあなたに巡り合わなかったら 私は木の枝にしがみついたまま中がくって いく果実みたいなものだった わあのまま定者の名を背負って青春を立ち かららたせてしまうところだった わ高屋のアブが与えてくれる閲reprと 中速の中で私はすすり泣きが止められ なかった許されるなら私は2日でも3日で もさやとそうしてベッドの中に横たわり指 を絡ませ合い足と足を重ね合い息を潜めて 過ごしたかっ た5年も触れ合わない夫の柔らかな肉の体 はもう私の記憶から遠いものになってい た男の体は私にとっては高屋の肉の薄い骨 の硬い鋼のようによく慕う浅黒い体でしか 思い浮かべることはできなかっ た1年ばかりの夫との肉体的な生活では私 はまだ体も情感も幼く感能の目覚めは得 られなかった結婚生活を6年も送ってい ながら私は男のものがどんな形態なのか何 1つ知ってはいなかっ た夫のそれを目に見ることは愚か 手にすることもなかった稀に姑に変わって 秋彦のムを取り替えてやりながら私は 時折り必要以上に長くまじまじ見つめたり 触れたりしたことがあっ たしなやかな愛しい秋彦の可愛らしさを私 は母親としての愛情でよりももっと 恥ずかしい好奇心で眺めていたのかもし しれない今私はすでにそれを知っている上 孝也のセックスに荒々しく力がみった時の 色をあるいはいじらしくはにかんだ時の形 をそして彼のその裏側に隠れていて私に 発見された彼さえ知らなかった小さな ほ不倫で不定なジジに私はますます溺れ こんでいきながら不思議に卑屈な感情が

湧かない高屋といる時私は世界中に何1つ 怖いものがなかったこんなに愛し合い理解 し合い共有し合った心と体が不特技のなり 呼ばれる道徳が私には信じられない世間の 決めたその道徳は私に定助の金の冠を載せ てくれたそれと同じ道徳がやがては不定の トの冠をかせようとするであろう破滅の その日が明日やってきても私は恐れはし ない だろう私は高屋との常智が他に漏れるのを 極端に注意して防いだいいじゃないか どうせいつかは分かるのだそれよりももう この間違いから1日も早く抜け出す努力を することだよ高は私の最新をなじってよく 言うようになった高屋の間違いとは私たち の不倫な常時ではなく私と夫との生理の 伴わない結婚生活を指していたその話に なると私は悲しくなり黙り込んでしまう高 の言から私に家のネイで外国語の本でも 開いているであろう夫の姿がまざまざと 浮かんで くる柔らかな髪がきちんと後ろに解きあげ られた夫の白く光る広い額あの病人特有の 薄紅を底に沈める豊かな方部屋着のゆく まつわりつく見かけは堂々と頼もしい服の いい姿それらが胸がキリキリする懐かしさ と愛しさで私のうちに思い浮かべられるの だ私はあなたを愛してるわもう夢中よ何の 見境もない愛し方でもこすを嫌いになった のではないのよ私たち夫婦の間って肉体的 なりはなくても心はどの夫婦よりも 愛し合ってきたのすまないって気が不思議 なほどないのに私のいなくなった後の幸介 の生活なんて当て考えられないのよ私は なんと言ってこの心を高屋に理解させよう かともどかしく涙ぐんで しまう夫と正常な夫婦生活を行っている妻 が私の立場になったのなら違うのだ夫の 生理を受けつけないとか反発するとかの 抵抗が生じかえって自分の真実の心のあり 場所が分かり決断がしやすいのではない だろうか私の場合は高屋とどれほど快楽の かを尽くし身を燃やし疲れきって帰っても 夫に体でそれを嗅ぎとられる恐れはないの だっ た私はそんな日は自分の心身が中足して いる喜びから常にもして愛情に溢れる状態 で夫の前に立った私の声は恋をしている女 のつややかさがあり私の皮膚は淀みない血 の流れで現れて輝き私の目は愛と献身の 情感でうるんでいる 私の味わってきた閲reprを夫に分けて やれない不便さから私は夫を母のように 甘やかして やるかな子はこの頃とても綺麗になったよ

夫は私にそんな風にまた新しい髪型を考え 新しい服のデザインをする私はその午後高 のベッドでにほぐされる神を朝の夫の 目覚めを喜ばせるため心を込めて言い あげるよそには矛盾と義満と富実に満ちた 生活を私はどこまで続けていこうとするの だろう高屋の側にも東京に祭祀があるの だっ たかわいそうだけれど仕方がないよことと の恋が僕にはかけがえのない真実になった のだ今までの家も金も全てやってしまい 別れをつけてくる今のかな子ほどの贅沢は させられないにしても何とかやっていける よ高家が頼もしげにそんなことを言って くれると私は夫へと同じいらしさと哀れさ で高屋の妻やこののためにに激しく泣き 出し た佐の高いコンクリートの掘が見えてくる と高屋はもう一度私のくびれた腰を 引き寄せ後戻り させる次第に2人は大胆になった王子の ホテルから別れともない感情を持ち越して エシへ帰り佐家の入口まで高は私を見送っ てき たの予定の滞在日数はとくに切れていた 高屋は音楽堂の設計をS市で仕上げること にしてさらに長い滞在に全てを切り替えて い た暗い芝がきが左右に並んだ明のない細い 路地へ高屋は私を誘い込んで いくのとの消えた池垣の影の闇はたと私に はすでに馴染み深いものだったきしな私の 骨が音を立てそうなほど高屋は 抱きしめる唇が激しく合わされる私のうち には待たしても観能の波が溢れたって後頭 部が甘くしびれ込んでいく ああどうしてこう可愛いんだろう可愛くて たまらない口をわずかに離しうめくように 言うとまたた私の濡れている唇にむりつい てくる私の目尻には静かに涙が伝わり 始める別れが切なくて流れる涙ではなかっ た高屋のアブに鳴らされた私の感能がある 極みに来ると静かに溢れ出す涙であった もう だめあんまり遅いわ高は黙って私の体を もう一度締めつけ案外素直に元の道へ 引き返して いく高屋はいつものように佐の コンクリートの兵の中央にある電柱の影で 立ち止まった2人の名付けた席書がその 電柱であった高屋はそこよりは一歩も入ら ないと私に約束させられてい た高に背を見せ今度こそ足早に私は 出す席書を超えた途端かな子の後姿は僕の かな子でなくなるから不思議なんだあんな

風にきっぱり心の使い分けができるなんて やっぱり女の方が男より魔生なんだな ベッドの中でいつだったか高屋が少し 意地悪目つきをして私を責めたことがあっ ただって書でも作ってよかなければ私家へ 帰っていく心のはみが永久につかない気が するんですものだからそんな無理してまで 帰ることないじゃないか話がまたそんな方 へ向かっていくと息苦しくなるばかりなの だこの頃ではほんの些細な言葉の端から 必ず話がそこへ慣れこんでいくそうなると 2人の間では永久に堂々巡りで結論は出 ないしまいに高家は自分で自分の言葉に 興奮し心にもなく私の心を傷つける言葉を 浴びせかけるのだっ たあなたを愛してるこんなにそれを疑う なんてあんまりよ私の体が示す高屋への 完璧な愛の証がそれ以上私を責める高家の 言葉をからし た積書を超えた私はは絶対に振り返ら なかった自分の姿が御影の大きな佐川の 門中の中へ隠れるまで決して関所から高屋 が立ち去りはしないのを背中いっぱいに 感じ取ってい た振り返れば黄金の馬車がかぼちゃに 変わってしまうと言い聞かされている童話 の中の少女のように振り返ることを恐れて い た夜の早い差がわけではもう家中の明りが 消えわずかに内玄関ののとが私のため消し のされているもう11時はとくに過ぎて いる時間であった靴音がどんなにしんでも 砂利道に響き渡るのを恐れ私は門を入ると 靴を 脱ぐナイロンの靴下を通して足の裏に 伝わってくる砂利の痛みが私にはむしろ 何かの意思ある刑罰のようで心よくさえ もう内玄関の戸明かりでいつも ハンドバッグを開け小さな鏡を 覗き込む高との開くことのない切粉で口紅 の後方もないのが常であっ た断念に唇を塗り鏡を傾けて自分の瞳を 覗き込む薄暗い表面に煙ったようなまつ毛 に囲まれた私の瞳はふぶかと住んでいる たった今夫ではない男と感能の限りを 燃やしてきた女の目とは思えない女の体の 中にはどのような不思議なからくが隠され ているの だろうどんなに足音をしんでいても必ず夫 の部屋からは声がかかっ たかな子かいえええただいま遅くなって私 は夫の部屋のドアから顔を覗かせ優しい 笑顔で挨拶だけを送っておくそれから 大急ぎで浴室へ行き風呂を 浴びる高屋と泊まる部屋にも浴室はついて

いたが高屋と一緒に浸った湯の匂いを 我が家のゆで流し落としたかった夫の異常 に敏感な病人特有の神経に私は何も 感じ取らせたくないのだそんな心遣いを夫 に残してる私は高とのどんな激しいアブの 瞬間でも高屋の歯形や爪音が私の体に残る のを極端に恐れてい た結局君は亭主しか愛してないんじゃない か僕とこれだけの時間を強力していながら 亭主のために無傷な皮膚を残しておき たがる君は僕とただ肉体遊戯だけ楽しんで いたいの か高家の最もな避難の声が私の耳に 蘇る肩に歯を当てると言って引かない高屋 と争った時つまれた右の小白部に高屋の指 の爪跡が薄く残った私はその後に唇を 当てると湯の中で声をしんで涙を振り こぼした高屋へとも夫へとも分からない すまなさと愛人の情が溢れてきて私は涙に 蒸せかっ たここ2年ほど順調だった夫の体にこの夏 の異常な暑さが答えたのか秋に入って突然 また病性が急変し た診察した私の父はその場から夫を海辺の 分院へ入院させ たその部員はよほどの重症患者だけを 入れることになっている病院の敷たりを 思い出し私は全てを悟っ たかな子今度こそ覚悟は必要だよ父は私の 顔を見る勇気もない風に物影で私に囁いた 父の言葉によれば 夫の病気はここ数年持ったのが不思議だっ たというの だ幸介君には何か人とは違う生きるための 強い精神があってそれが支えていたんだね 父の言葉のニュアンスもまた世間の目と 同様それは定宿な私の犠牲に満ちた奉仕と 愛が源だったのだろうと語っていた私は 初めてこの間からの高屋との恋の恐ろしい 意味を悟っておい た夫は知ったの だ私の直感は正しかっ た入院して10日ほど経って夫は私1人に 会いたがっ たかな子 もう僕はだめだよ 急変して日が浅いのでまだ外には衰えの出 ていない夫の顔はむしろ爽やかに住んでい た私はこの冷静な夫の目にごまかしもきめ も言えずただ涙を流してい た かな子黙って死ぬつもりだった けれど帰ってそれは卑怯な気がしてき ただからやっぱり話しておきたいんだ あなた僕はね

かな子知っていたんだよ みんな この間東京の上木君の奥さんから僕宛てに 手紙が来 た上君が奥さんにを迫ったというのだ堂々 と理由を書いて ね奥さんはそこにかの名があったので 思い余って僕へ磁力を申し込んできたの だ上君の手紙も同封してあっ た男らしい手紙だっ た金子への愛と奥さんへの誠実が溢れてい た 僕は完全に負けたの だ僕はねその手紙が来る前から君たちの ことは知っていたん だかな子僕を軽蔑して くれ君を話したくないために君を少しでも 楽しくしてやりたいために外へ出しながら 僕はと不安でいても立ってもいられなかっ た君のせにはいつでも僕の金で動いていた 私立探偵の目が追っていたんだよ僕を軽蔑 してくれでももういい僕の死でみんな解決 する だろうかな子僕を許してくれるかいあなた 私は許されなければならないのは自分だと 夫のベッドにしがみついて泣きもえ たその 翌日夫は永眠し た列車の窓から高屋の瞳が包み込むように 私を見つめていた東京に帰って行く 高屋いいかい僕は君がどうあろうと自分の 生活を整理しておく君はそれに何の責任も 感じなくていいんだでも君がやっぱり僕を 必要だと悟った時は僕を呼んでくれる ね ありがとう私と高屋の間にはもう語り何も 残ってはいなかっ た夫の骨を家に迎えても私はまだ夫の部屋 に夫が私を待っているとしか感じられない の だ死の直前私の罪を軽くしていってくれた 夫の言葉を私はふと疑ってみたり する私の罪を分け持ってくれようとした夫 の 一斉1代の美しい嘘でなかったと誰が 言えよう高屋の列車は去っ た私は収容のきらめいている駅の外へ 向かって今こそ1人で歩き出し た私の行手に は夫と高との恋の 物季節が待って いる選び抜かれたとっておきの名作朗読 文芸集文芸オラースリラーサイコ サスペンス人生に潜むミステリアス空の 数々おすめは

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#文学 #朗読 #瀬戸内晴美
1958年9月発表の作品。
作者33歳 小説家としてのエネルギーが
燃え盛った頃。

フランスの小説が大好きでチャタレイ婦人を
彷彿とさせるストーリーですと、ご親族で
作家の長尾玲子さんに伺いました。

@名作朗読チャンネルBun-Gei

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瀬戸内寂聴(晴美) 1922年~2021年

徳島県徳島市生まれ。
東京女子大学国語専攻部 学位は文学士。
天台宗 尼僧 僧位は大僧正。
生きることは愛することを、座右の銘に。
数多の人生遍歴を重ね今も尚、前を見続けている姿勢は感動的だ。
作家としても、これまで多数の著作により多くの文学賞を受賞。
いち早く「ケータイ小説」のジャンルにも進出し、
新境地へのチャレンジ精神は旺盛そのものだ。

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ケリー・シラトリ

1961年 東京生まれ。
メディアクリエーター・女優・作家

幼少期より劇団に所属、子役として舞台等で活躍。
文化放送アナウンススクール卒業。
学生時代はラジオ・TV等放送局でアシスタントとして活躍。
海外生活に長け文筆家としてコラム・エッセイなど多数掲載。
FM局MC、司会業、朗読会等多数。
パロディ、バラエティ、ミステリーまでこなす実力派女優。
現在は作家・シナリオライター・放送作家として幅広く活躍中。

2 Comments

  1. 目標のない(愛)って、虚しく、いずれ別れが(情事)だからこそ燃えるのでは…。拓哉ともしも…一緒になられても、幸せにはなれないと想う…😢

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