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もうそれほど長く生きられないと思うのだ からあなたに話しておかなくてはならない 秘密がある の風のない静かな夜義母の声だけが 聞こえる時々言葉に詰まりながらも義母は 私にとんでもない秘密を打ち明けてくれ たそれから5年の月日が流れ たいつもと同じと思っていた朝に突然介護 生活が 終わるとても天気のいい朝だった庭にやっ てきたスが可愛い鳴き声でぴょんぴょんと 動き回って いる義母の部屋に入りおはようございます といつも通りの声で話しかけながら カーテンを開けると義母の返事は ないまだ寝ているのかなと思ったが義母は 夜中のうちに静かに天国へとと旅立って しまったその後の動きはとても素早かった すでに前もって覚悟していたことだったの で葬儀は滞りなく終わり義母がいなくなっ てしまった部屋を私が見つめていると背後 から直樹が礼服を乱暴に投げつけてき たおいどれクリーニング出しとけ よ5年の歳月で夫婦の関係は最悪なまでに 悪化して 私は歯を食いしりながら床に落ちた服を 拾い上げると胸ポケットの中に封が入って いるのを見つけ た市役所でもらう簡易な封筒の中身は直樹 が記入済みの離婚 届けこれも出せってことよ ね私は今が最高のタイミングだと思いすぐ に離婚届に自分の名前を記入してそのまま 近所の役所に提出した衝動的な行動では あったが準備はできていたのだ5年前に 義母が私にあの秘密を打ち明けてくれた日 から [音楽] ずっと私の名前は前田しず夫である直樹と はお互いの会社の関係で知り合い20代 後半で結婚したというところまでは良かっ たが子宝からには恵まれず妊活に励んでい た直樹と結婚をした後も私は仕事を辞める ことなく働き続けていたがある日義の母の 体調が悪化し介護をしなくてはならない 状況になってしまっ た仕事から帰宅した直樹が疲れた表情で ネクタイを緩めながらソファーに腰かけ ぼんやりとスマホの画面を見つめて いる直樹の髪は乱れ肌は荒れている最近は 休みの日でも義母の病院に行ったり心身共 に疲れているように 見える甘いコーヒーをナキに入れると彼は 少しだけ頷いてカップを受け取って口に つけ

た体大丈夫疲れているように見える けどありがとうでも大丈夫だ よねえさん体調どうな の直樹はコーヒーのカップを両手で包み ながら少し考えてから答え たもも病があった からこれから親戚の誰かが介護しなくては ならないと 思う私お母さんの介護してもいい よ私の提案に直樹は驚いたように目を 見開い たと義母とは仲が良く体調が良かった時 などは2人でランチや買い物をするような 関係だっただから私が義母を介護すると いうことにはあまり抵抗はないいつだった か義母は冗談ぽくいつか私の介護をお願い しようかしらと笑っていたのを思い出した 直樹はカップを大事そうにテーブルの上に 置きういた表情で私のことを優しく 抱きしめ 私たちの妊活はその日を最後に終わった 直樹ははっきりと名言したわけではない けれど私の中では子供を作るということを 諦めた介護のために義母の家に同居すると いう選択肢を自分で提案したのはこの妊活 をやめる言い訳が欲しかっただけなのだ 義母は私たち夫婦が同居してお世話します ということに最初は反対した [音楽] そんな申し訳ないわよしず さん心の底から申し訳なさそうに言う彼女 の手を握り私は首を横に振っ た至らない部分もあるかと思いますがこれ からよろしくお願いいたし ます申し訳ない申し訳ないけど本当に ありがとう義母は私との前でを流して喜ん でくれ た私は義母の震える方を撫でながら自分の 中に沈み込んだ暗い考えを必死に隠そうと してい た私は子供がいるのが幸せな家庭だと 思い込んでいたのだ子供のいない幸せを 想像できず将来が暗闇に覆われたような 恐怖からやっと解放されたのだと義母の手 を握りながら思っ たそしてその言い訳を義母に押し付けて いるのだと私は思っ た勤めていた会社をやめ義母の世話と直樹 のために生きていこうこの時の私は全く 後悔などしてはいなかっ た義母との生活が始まって半年後のこと 直樹は仕事が忙しいらしく帰宅が遅くなっ た義母が眠りについた後に台所で洗い物を 終わらせに入ると時計の針は真上を示して いるその頃の私は趣味でハンドメイドの

アクセサリーを見よう見真似で作り インターネット販売を開始した頃で全くと いうくらいに売れなかったが私の作った アクセサリーを義母が上手ねと褒めて くれるのが嬉しかった直木の帰りがどんな に遅くなってもハンドメイドの アクセサリーを1つ1つ丁寧に作り上げな いつも寝ないで待ってい たきは真中に帰宅し た無言でリビングに通勤用のバッグを置く と私とは視線を合わせずシャワーを 浴びようとするので少し苛立ちながら彼の 背中に 問いかける最近遅いね仕事忙しい のまあそうだなほとんど毎日残業じゃない 体疲れて ないまあそうだ な生返事を繰り返しながら服を脱いで シャワーを浴びに浴室へと入る私は直樹が 脱いだ洋服をまとめながら肩を落として ため息を つく最近では義母以外の人と会話する機会 が少なくなっていた直樹は義とはあまり顔 を合わせず仕事を理由に休日も出勤する ことが増えていた この日の私はどうしても直樹としっかりと 話がしたくて彼がシャワーを浴びて出て くるのを待つことにし た直樹は私が寝ないで待っていたので露骨 にめんどくさそうな表情を作り冷蔵庫から 取り出したビールを片手に私の近くに 歩み寄る寝ないの かあなたが仕事で忙しいのは分かってるで も少し私との会話をしましょう よ夫婦の会話ね例えば どんな半分ほど飲んだビールをゆっくりと 揺らしながらほをついて私を見つめて くるそうだ私が作ったハンドメイドの アクセサリーを見てもらおうと直樹に作っ たばかりのイヤリングを手渡した天然席 パーツを組み合わせて作ったイヤリングは 細部まで見たら初心者が作 と分かるだろうがきには気づくことはない だろう綺麗だねとか上手だねという言葉を 期待していたのに直樹は興味なさそうに 一別してから取り出したスマホに視線を 落とし たとても綺麗じゃないこの色合いが好きな のよそれ売れるのいやインターネットで 売ろうと思ってるけどなかなか売れないよ 初心者だもんまあそうだ な直樹がそっけなく答えた介護が始まる前 はあれほど疲れきっていた直樹の肌は今は とても血色が良く残業続きの疲労を感じ させないくらいに健康的

だ私といえばもうしばらく化粧もしてい ないし鏡を見る回数も減って いるもしかしたら今の瞳に移っている 私自身の姿はどうしようもなく疲れて しまっているのかもしれないと思うとなん だか少し恥ずかしい気分になった同時に ずるいと思った私は思い切って言うことに し たねえ少しの間でいいから私にも休みを くれないお母さんの介護で疲れちゃった のそういうのは女の仕事だろあまり本気出 あらずに適当でいいよ適当 で残ったビールを飲み干し直樹は寝室へと 向かって しまう適当でいい自分の実の母親の介護を 適当でいいしかも介護は女の仕事とはどう いう言葉として解釈するべきなのか私は 悩んでいた結局その後も眠気が全くなかっ たのでリビングで直樹が飲んだビールのき を見つめていると真中だというのに義母が 私の元にやってきたトイレかなと思った私 はすぐに椅子から立ち上がろうとすると 義母はそれを静止し少し話をしましょうと 言っ たしずさん本当にごめんなさいね私のため にあなたの人生を狂わせてしまったようで 私は瞬時にさっきの私の介護に疲れたと いう言葉を聞かれてしまったのだと悟り ごめんなさいと頭を 下げる義母は悲しそうな声で謝らないで頭 を上げてと私の肩に手を乗せていったその 手のひらはとても小さくそして細くて 弱々しかっ たもうそれほど長く生きられないと思うの だからあなたに話しておかなくてはなら ない秘密があるの 風のない静かな夜義母の声だけが 聞こえる時々言葉に詰まりながらも義母は 私にとんでもない秘密を打ち明けてくれ たそれから5年の月日が流れたいつもと 同じと思っていた朝に突然介護生活が 終わるとても天気のいい朝だった庭にやっ てきたスズメが可愛い鳴き声でぴょぴょん と動き回っている義母の部屋に入り おはようございますといつも通りの声で 話しかけながらカーテンを開けると義母の 返事はなかっ たまだ寝ているのかなと思ったが義母は 夜中のうちに静かに天国へと旅立って しまっ たその後の動きはとても素早かったすでに 前もって覚悟していたことだったので葬儀 はなく終わり義母がいなくなってしまった 部屋を私が見つめていると背後から直樹が 服を乱暴に投げつけてき

たおいどれクリーニング出しとけ よ5年の歳月で夫婦の関係は最悪なまでに 悪化してい た私は歯を食いしりながら床に落ちた礼服 を拾い上げると胸ポケットの中に封筒が 入っているのを見つけた市役所でもらう 簡易な封筒の中身は直樹が記入済みの離婚 届けこれも出せってことよ ね私は今が最高のタイミングだと思いすぐ に離婚届けに自分の名前を記入してその まま近所の役所に提出し た衝動的な行動ではあったが準備はできて いたのだ5年前に義母が私にあのを打ちて くれた日から ずっと役所からの帰り道私は義母から紹介 されていた弁護士に連絡を入れたそれから の生活は日々直樹と顔を合わすこともなく 淡々と続いていっ た義母がなくなってからの生活は抜け殻の ようであっ たもう誰かに名前を呼ばれることもなく 夜中に起きて義母の様子を気にする必要も なくった洗面台で顔を洗うとそこには実 年齢よりはかに年上に見える自分の姿が あっ たこんな姿になるまで直樹は私を苦労させ ていたのかと思い彼が私を手助けしてくれ なかったという事実だけがふつふつと 憎しみという感情になって沸き起こって くるクリーニングに出す前の直の服を乱暴 にビニール袋に入れて床に置い たこのままで終わると思わないでよ なきこの5年間あなたのしてきたことは しっかりとあなた自身に責任を取らせて あげるから ね残業という言い訳もなくなり当たり前の ように家に帰らなくなった直樹だったが 義母の49日を終えた後に開かれた遺言書 の公開に参加するため裁判所に親族と共に 集まったとに久しぶりに顔を見た気が する直樹は私の顔を見ると嫌味な笑顔を 見せ他の親族にも作り笑顔で挨拶をかわし た義母は生前同居前に弁護士を通して遺言 作成や遺産分配などを相談しておりその 内容を家庭裁判所に集められた親族たちの 前で発表されることに なる飾のない会議室のような場所に集めた 親族たの前に見切れな格好をした弁護士が 遺産内容を淀みない声で発表を始める え親戚一同はその内容に絶するそれは次の ような始まりであっ たずっと介護をしてくれたしずさんに遺産 を 渡す弁護士が話してくれた短い文章の中で 私の耳に強く響いた言葉だった

1人息子である直樹の遺産分は最低限で他 のほとんどの遺産が私に譲られるように 義母は考えてくれていたのだ私が懸命にし てきた介護が報われた気がして私はか 極まって涙を流しそうになったが少し離れ た場所で話を聞いていた直家が机を大きく 叩いて立ち上がっ たこんな話があってたまるかしずが母さん を脅したのか何を言ってるのこれは お母さんからの最後の手紙よ侮辱するよう なことを言わないで遺産をしずに渡すだっ てふざけるなこれは陰謀だしると弁護士が グルになって騙そうとしてるの だろう顔を真っ赤にさせて怒鳴り散らす 直樹に弁護士は冷静に否定し た集まった親族たちに用意された遺言書が 義母の直出であることを確認させ間違い ないという証言をもらっても直樹は納得の いかない様子で頭を かきむしるこんな遺言書は不当 だちばしった瞳で親族に当たり散らす直樹 の前に弁護士はお母様から直木様宛てにと 手紙を渡した着ているスーツと紙を見し ながら乱暴に受け取った手紙を開いて読み 始めるとすぐさま破り捨て皆を驚かせ た破った手紙を両手で丸めて壁に投げ捨て た直樹は苛立つ気持ちを抑えきれないよう で拳を固めて何度も自分の太ももを 殴りつけるきっと直樹はこの状況をどう やって打破しようか試案しているのだろう と私は思っ た親戚たちも遠巻きに彼の異常な様子に 言葉を失っているようだ 弁護士がしず様宛てにもお手紙を預かって おりますと言って私にも義母からの手紙を 手渡してくれた直樹が私を睨みつける中 読み始めた冒頭にはみんなに聞こえるよう 音読するようにという指示があり私はその 胸を伝えた上で手紙を読み 始める皆さんこの度はこのような形で我が 息子のをさらすことをお許しください きっと息子は私からの手紙を読んで 破り捨ててしまう でしょうその場にいた誰もが息を飲んで話 に聞き入っ た義母は直樹が自分からの手紙を 破り捨てることをそしてこのような遺産 分配を提示した際に必ず反対してくると いうことを予感していたという冒頭で 始まっ た義母の体調が悪くなり 介護が必要になった半年後から直樹は不倫 を始めたという話で親戚一同は顔を 見合わせ たよよな直樹が誰かと電話している声を

聞いてしまって不倫相手と楽しく話し ながら自分の死後の遺産を狙っていると いうことを知った らしいどうか皆さん直と不倫相手に自分の 遺産が続されないよう全力で阻止していた お願い申し上げ ます義母の手紙は以上 ですこんな話を誰が信じるか証拠でもある のか証拠 は私はあらかじめ用意していた写真を親戚 のみんなが見えるように丁寧に並べ たそれは5年前私に秘密を打ち明けてくれ た時に義母が用意してくれた不倫の証拠 写真であり探偵更新上を使って抑えた紛れ もない浮気の証拠であっ た探偵を雇って自分の息子を落とし入れ わけがない実の息子だぞ母さんがこんな ことをするわけがその実の息子に介護が 必要になった途端に遠ざけられて挙げ句に は不倫までしてどれだけお母さんを苦しめ たと思っているの よしばらく動揺して視線を泳がせていた 直樹だったが決定的な証拠と私の気迫を 突きつけられると私の前に急いで歩みより 床に手をついて土座し たすまないしる本当にすま ない直樹は戸惑うそぶりもなく額を床に 押し付けながら叫んだ彼の謝罪の声は外に も響き渡るくらいに大声で何度も何度も すまないと謝罪を続けていたが私は彼の 後頭部を見つめながら蹴り飛ばしてやり たい気持ちを必死に抑えつつ今更何もかも 遅いわよと呟い た寂しかったんだ俺はずっと寂しかった 母さんの介護が始まってからしずはずっと 母さんにつきっきり俺は会社から帰って しずと今日の話をしたくても母さんが咳を すれば中断させられてしまううんざりだっ たん だ私も寂しかったわそして悲しかっただ からさよならしましょう 直樹頼むしる不倫相手とはすぐに別れる から離婚だなんて言わないでくれ遺産に 関してはもう一度持ち帰って話し合おう じゃない か直樹は半ば強引にその場をまとめあげ この話は一度夫婦で話し合いたいと2人 だけで疑実家へと 戻る車で移動中直樹は必死に考えを巡らせ ているようで何度か爪を噛んだり髪を かき上げたりと落ち着きがなかっ た親戚の方たちの中には2人きりにして 何か良くない事件でも起きるのではないか と心配する人もいたが私はそれはありえ ませんと微笑んだ自分の親の介護を妻に

押し付けこの最中に不倫するような小さな 器の人間にこの今の状況を同行できるだけ の知恵があるようには思えなかったからだ そうして裁判所から帰宅して自宅に入った 瞬間に彼は再び土下座したあまり広いとも 言えない自宅の玄関で汚れて吐かなくなっ た直樹の靴の隣で彼は額を地面につけて 謝罪 する頼む許してくれと言っても本当は好き でも何でもないんだ本当にほんの出来心で 別れたくても別れられない状況になって しまってだけど目が冷めたよすぐにでも 別れるだからしる離婚だなんて考え直して くれ別れたくても別れられない状況って あなたが別れるって言えばそれで終わった 関係じゃない のそうだけど分かるだろから帰ってきて 暗い顔をしたお前がいる俺は癒しが 欲しかっただけだこれからは母さんもい ないし俺とお前でこれから新しい生活が始 まるってのに さ新しい生活そうねこれから始まるの ねそうだだから今はりこんだなんていう話 は置いておいてだな私が冷たくきを 見下ろしていると玄関の扉が前ぶれもなく 開く直樹はえというほけた声と共に顔を 上げて振り返ると女が立っていた金色の 長い髪をした派手な化粧をした女は ブランド物のバッグを肩に下げ黙って直樹 を見た後私の方に視線を移した土下座して いる直樹に向かって離婚できたって聞いた けどどういう状況と首をかげる まるで状況が理解できていない直家が数 秒間黙り込んだまま急に立ち上がって派手 な格好をした女の肩を掴ん だ何しに来た帰れ帰ってくれ今はその違う だろうはあどういう意味直樹が奴隷奥さん との離婚が決まったから早く家に遊びに 来いよて言うからのにどういう状況なのさ これどういうことだという感情が顔に 滲み出ている直樹がゆっくりと私の方に 視線を 戻す私は彼の怯えて子犬のような目になっ た瞳を見つめた後何も言わずに玄関から 離れてリビングに 向かう直樹は待ってくれと言おうとした ような気がしたがすぐそばで派手な女が どういうことなのよ離婚したはずじゃない の奥さんまだいるじゃんと彼の腕を引いて 説明をせかした私は棚からティーポットを 取り出した丸い形をしたロココ帳で花柄の ティーポットは義母が愛用していたものだ 義母がまだ介護状態になる前に アンティークを売っている店で一目惚れし て購入した

ものこの素敵なティーポットに合うような 素敵カップとソーサーを探しましょうと 2人で骨董一や色々なショップを探したが とうとう見つけることはできなかった介護 していた頃も調子が良い時は2人で紅茶を 入れてチャバの香りを楽しんだこと 懐かしく 思う触るなこの家から出て行け2度と顔を 出すな玄関で2人の怒号に近い声が 響く私がTポットにチバを入れ夜間で 沸かした湯をゆっくりと注いでいる最中 不倫相手の女があんたが呼んでおいてなん だって言うのよと金切り声を上げ直樹と 激しい言い争いをして いるチャバを蒸らしている間にカップと ソーサーを用意しちょうどいい頃合いで 紅茶を注いだなぜかいつもTポットから カップに注ぐのは義母の役割だった 義母はいつも自分の分を先にカップに入れ た後に私のを用意する今も思い出す義母が 紅茶はね最後の一滴が一番おいしいの人生 と同じねと寂しそうに笑っていたこと をカップの薄い飲み口にそっと唇をつけて 少しだけ飲むと香りが口の中に 広がる頼むから帰ってくれ慰謝料だろうが 何だろうが払ってやるからもう俺の前から 消えて くれ爽やかな紅茶な香りが広がるリビング から少し離れた玄関で聞こえる激しい罵倒 の言葉を黙って聞いてい た不倫相手の女は直樹に何度も説明を求め ている大体の予想はしていたが直樹は義母 がなくなった際の遺産の一部で私と離婚し その後は不倫相手と楽しく過ごそうという 約束をしていたようだやがて玄関が静かに なった直樹が何やら決意したような顔で私 の前に座り深深ともう一度頭を 下げるもういい加減この男の顔も見飽きて きたなと私は思っ たさっきの不倫合いて呼び出したの私だ からあなたのスマホを使って そうかいやそれはいいんだもう彼女とは 別れた からそんな風には聞こえなかったけど ね直樹はへへへと頭を撫でながら笑っ た目の前のこの男のどこをすいて結婚した のだろうと今更ながら 考えるこそこそと不倫相手にとりあえず後 で連絡するからとごまかして妻とは必ず 別れると小さな声で約束していたのが私の 耳に届いていないと本気で思っているの だろうかまだことの重大さに気づいてい ないなきに私はとても丁寧に説明すること にし たあなたの考えは察しがついて

いるとりあえず今の段階で離婚さえし なければ遺言書の通り私に義母の遺産が 相続される遺産の相続が終了した後で私と 離婚をすれば財産分与によって遺産と保険 金を半分は受け取れると採算しているの でしょうだけど私たちもうすでに離婚し てるじゃ ない私の言葉の意味を理解できず直樹は口 を分けたまましばらく黙ってい たはどういう こと義母の葬儀の後に彼の礼服から出てき た記入済みの離婚届けを使って提出したと いう話をしてあげたどうせ彼は不倫相手に 離婚するという意思を見せるために あらかじめ書いてあったのだろうが頭が 悪いのか容量が悪いのかまけな男で助かっ たすでに役所に提出してあるという話を すると直樹は青めた表情で私の背後にある 仏壇に置かれた義母の異を見つめ 1人息子に対してこれだけの打をできる ように準備してくれた義母の苦悩がどれ ほどだったか私には理解できないだけど そのような苦を乗り越えてでも私を 助けようとしてくれた義母に私は心から 感謝しなくてはなら ないそれから数年の月日が流れた義家は書 の通り私の所有となったもちろんの成立し た直樹と一緒に住むわけもなく彼を実家 から追い出した後には直樹と不倫相手に 多額の慰謝料を請求した不倫の件に関して 直樹は親戚一同から激しい出席を受け誰も が私の味方になってくれた会社でも不倫 現場を目撃した同僚によって噂され直樹は 白い目で見られながら生活をしていると いうもも遺産目当てだった不倫相手はきと 別れしかも直樹が金でたぶらかしたという ことになってしまい不倫相手の暴力的な 友人に毎晩のように追われることになって しまい彼は最終的に引きこもりになって しまっ た私はと言うと義母の親戚にとてもよくし てもらいながらハンドメイドの アクセサリー販売を本格的に始めることに した親戚の1人に自営業をしている人がい てその人の紹介で私はハンドメイドを本格 的に勉強する機会を作らせてもらうことが でき た徐々に私のアクセサリーは インターネットを中心に売れ始め穏やかで のんびりと暮らしている自分で制作した イヤリングを耳につけ今は化粧も毎日して いる鏡の中に移る自分の姿はもうあの頃の ような疲れた顔をしていない今は年相応の 苦労と経験を重ねた1人の大人の女性の顔 をして

いるああそうだとクリーニングから帰って きた直樹の礼服を唐突に思い出した ビニールに覆われた礼服をクローゼットに 入れたままずっと忘れてしまっていたの だ私はそれを取り出し昨日の生ゴミなどが 含まれた大きめのゴミ袋と一緒に丸めて 縛るとそうだ今日はゴミの日だったわねと 思い出して嬉しく なるゴミの出席場に大きめの袋を置くと私 は腰に手を当てて背筋を伸ばし帰ったら もう一度あのティーポットで紅茶を飲もう と思っ た家に戻ると誰もいない台所で夜間に火を かけたコロの近くに置いた腰かけ用の 小さな椅子に座り青い炎を眺めながらギボ のことをを 思い出す義母が初めて私に教えてくれた ことが紅茶の入れ方の作法であっ たお湯は沸騰直前を使って一度必ずT ポットを 温めるそしてできるだけ水の中に空気を 含ませたいから少し高いところから注ぐと いいのよと得意げに話してい たお湯をティーポットに注いだら5分は 待つの十分にから飲んだ方がとても おいしいのよと義母は待っている間を 楽しむように時計を見つめてい たぼんやりとしていると時間が10分も 超えていた あららしまった わすぐにカップに注ぐと濃い色をした紅茶 が強い香りを放っているきっと最後の一滴 まで入れたら濃くなるだろうなと思い ながらも私はテーポットをカップに注ぎ 続ける私は1人カップを見つめてそっと口 に含ん だ温かくて苦みのある味わいが胸に染み 渡って くる黙々と大きな入道雲のかかったある 週末のことである私が1週間分ほどの荷物 をまとめていると実質から出てきた大輔と 目があった どうしたのその 荷物大すけちょうど良かったわ母さん ちょっと海外へ行くことになったのお店も 休業にしてあるんだけど1週間くらいで 帰れると思うからお家のことよろしく ねするとその言葉に反応したのは大輔では なく大輔の嫁であるありさんだっ た1人で海外旅行に行く気です かアリさんは信じられないとでも言いた そうに叫んでい た遊びに行くわけじゃないのよあの ね遊びじゃないなら何なんだ よちょっと2人とも話を聞い

て私は2人を落ち着かせて事情を説明 しようと試みたが彼らのボルテージは 上がるばかりでまともに話すどころでは ないずるいですよ私たち一緒に住んでるの に2人は騒ぎ続けついにアリさんは1人 旅行はおかしいとまで言い出し たこれほどわめく体力があるなら少しは 家事を片付けてもらいたいもので あるいそのこと永住すれば帰ってこなくて いいですよ 家も店も私たち夫婦が継ぐ わわかりましたそれじゃあ家も店もあなた たちに全て任せることにする わこれ以上の話し合いは無駄なのだと悟っ た私は宣言通り家も店も2人に任せること にして予定通りに海外へと移住したその 結果2人はとんでもない事態に陥ることに 私の名前はまゆみ56歳いわゆる荒らかん だ早くに夫をなくし残された酒屋を経営し て整形を立てていると言ってもそれほど 大きいお店ではなく10人ほどが座れる 程度の個人まりとした佇まいである従業員 はおらず私1人で切りもりしている ありがたいことにに今のところ常連のお客 様が耐えたことはないいつも誰かしらが ふらりと訪れてはのんびりと1日の疲れを 取って いくまゆみ姉ちゃんがいるから明日も 頑張れる よあんまり飲みすぎると良くないわよ奥 さんと娘さんもいるでしょう にあいつら俺に冷たいんだ よそんなこと言わないでケーキでも買って いってあげたらきっと喜ぶわ よそんなやり取りが生まれることもある そんな私には1人息子がいるもう成人して 会社員をしているがお店を手伝ったり継い だりといったことには関心がない彼大輔は 電気メーカーに務めており日々営業回りを しながら自分の好きな新しい品について 熱く語るのが楽しいらしい職場が遠いので 帰ってくることは稀なのだがそれでも帰っ てくるといつも危機として液晶テレビだの 掃除機だのな話をして くれるもちろん電気製品に疎い私には さっぱりわからないのだが大輔が会社員と してやりたい仕事がありそれに魅力や やりがいを感じているのだろうことがの中 で感じ られるもちろん本人が継ぎたいと言えば話 は別だが私は無理に継いでもらおうとは 思っていない大輔が楽しく仕事ができて いるなら何であっても構わないの だそろそろいい年齢だしお嫁さんの1人で ももらってくれたら私も安心できるのだが

今のところそうしたのろけ話は聞かない ところを見ると まだまだ先のことになりそう だある時急に振り出した雨に濡れて常連の お客様が見えたこの方はハミさんといい 美術に詳しく都内の展覧会にもよく足を 運ぶのだそうそんな彼がやれやれといった 様子で店に入ってきてまいったよなどと 話しているといつものように店に飾って ある切り絵を見た私は趣味で切り絵も作っ ていてこの時の切り絵も私が作ったもの だっ たこの切り絵新作会花火大会か風流でいい ねありがとう作った会がある わ作り始めたのは40歳を過ぎた辺りで 書店で見つけた切り絵のテキストを参考に しながら独学で学んだ 仕事や家事の合間にデザインナイフを握り コツコツと作る時間が癒しなのだ販売まで はしていないけれど出来上がったらお店に 飾ることにしていて時たまお客様から褒め ていただけるととても嬉しい気持ちに なるまゆみさんの切り絵は素晴らしいのに もったいない な何をおっしゃいますのただの道です よ私はお茶を出してはぐらかすように笑っ た元々手先が器用だったこともあり最近で は最密な作品を作ることが増えていた季節 に合わせたテーマを選ぶのも楽しかった 好きこそ物の上手なれとはよく言ったもの で ある虫厚い熱気がまだ残る夕方のことだっ た私がお店を開ける準備をしていると大輔 からショートメッセージが届いた今日これ から家に来たいというのだお店と自宅は 場所が少し離れており車でも10分ほど かかる帰ってあげたいがもうちょっとで 回転時間 だこれまで何の予告もなく帰ってきていた 大輔が急に改まってどうしたのかと思った が私はすぐに返事をした 今日はお店にいますから次の休みの日にし てちょうだい それから少しスケジュールを調整して大輔 は次の土曜日の日中に来ることになっ た私はどことなく胸騒ぎがしたがきっと 大丈夫と信じて過ごしたそしてその約束の 日汗だくになって大輔は帰ってきた外はマ を通り越して国書と言われるほどな暑さ だった ただいまお帰りなさいどうしたの急に帰っ てきたいだ なんて私は冷えた麦茶を出しながら リビングのテーブルに着く大輔も迎えに 座った彼はやや緊張した持ちでいやそのと

麦茶の入ったグラスをいじっていたさ最近 暑いし母さん元気かな て何よ心配してくれてたの ありがとうお仕事は忙しい のうんほら夏だしさエアコンとか扇風機の 売上が順調で さいつもと違ってはれの悪い様子に私は 何かおかしいと感じ始めた 何か言いにくいことを言おうとしているか 隠そうとしているのがよくわかっ たふーんそれ で私がなんとはなしに合槌を打つと大輔は 急に真顔になって一瞬たじろいでから行っ たあの あの実は 俺結婚したい人がいるん だ えこれはさすがの私にとっても晴天な霹靂 だったこれまで彼女だって紹介してくれた こともないのにそしてそんなそぶりも なかったのに急に結婚したい人がいると 言われて驚かない親がいるだろうか私は 画然気になっ た誰なのどんな人あなたにそんな恋人が いるなんて全然知らなかった わいやまあ言ってなかったしそのとても 可愛い彼女 で大輔は顔を真っ赤にしてぽつりぽつりと 話しだし たお相手のお名前はアリさんといい セレクトショップの店員さんだそうだ1年 前くらいに会社の同僚の付き添いで同僚の 奥さんにプレゼントするためのを選びに 行ったことがきっかけで出会ったらしい ハキハキとした姿と彼女が進める ファッションセンスそれに愛苦しい瞳に 大輔は痛められてしまったのだ以来 ちょくちょくお店に行き連絡先を交換して 交際がスタートアイリさんの朗らかな笑顔 に癒されることもしばしはありたまに言い 方もきついところがあるけれどそれも含め て全てが愛しいのだそう だこ1時間ほど話して彼のスマホで撮った 写真も見せてもらいおしゃれな格好を捨て 明るい髪にしっかりネイルも決めている 彼女とのツショットは本当に幸せそうだっ ただが気になることが1つある肝心の彼女 がここには来ていないこと だそれでアリさんはいつうちへ いらっしゃるの 私は流行る気持ちを抑えながらウキウキと して聞い た本当は今日一緒に来る予定だったんだ けど電車の遅延に巻き込まれてるみたいで 遅れるって言って

たあらそれなら駅で待っててあげればいえ じゃないうちの場所だって知らない でしょう にその時大輔のスマホにメッセージが届い た息ついた大輔 どこ一瞬だけ見えたそのメッセージは急い で打ったのかひらがなが多くとても 可愛らしかった大輔は耳まで真っ赤になっ てさっと画面を隠すようにして慌てて家を 飛び出して いくちょちょっと迎えに行って くる勢いよく閉まる玄関の扉を見ながら私 は肩をすめたそれからほんの数分ほで大輔 とアリさんはやってき たお邪魔し ますこの人が大輔の ママありさんは玄関に入るなり出迎えた私 を指さしていっ た始めまして私は大輔の母のまゆみです どうぞ上がってちょうだい 私は勤めて笑顔で迎えたがありさんの格好 に少疑問を感じた結婚の挨拶に来たのかと 思っていたが彼女の服装はオフショルダー にミニスカートととても結婚相手の親に 会う格好とは思えなかったのだ仮にも アパレルの仕事をしているのだしもう少し TPOを考えてフォーマルな服を着ようと 思わなかったのだろうかそれとも彼女の中 ではこれが清掃なのだろう か若者の感性についてゆけない私の心が 狭いのかもとちょっと不安になった私は グラスに麦茶を注ぎお菓子も少し出して リビングのテーブルについた ああこれ駅前のラスク屋さんの人気ラスク じゃん大すけママ センスあありがとうえっと大輔から話は 聞いてるのだけれどあなたがありさんはい そうですあ麦茶 おいしい彼女はよく言えば天心乱まといっ た印象だったちなみに今日もネイルは ばっちり決めているおいくつな の24です大輔とはごいです ね大輔にこんならし彼女がいたなんて何も 聞いてなかったからびっくりしたわお仕事 はされているのよ ねされてますよエビルの中にあるセレクト ショップで働いてて今2年目ですね私 アパレル専門学校卒業してからすぐ就職し たんであラスクもらっていいです か私はどうぞとお菓子を近づけた若い パワーにあされつつもなるべく笑を絶やさ ないようにするのが精一杯 だやっぱり おいしいラスクを頬張る彼女を見ながら 大輔が言っ

たちょっとあり忘れてないだろ俺たち今日 はああもう分かってるっていいじゃん ちょっとくらい さ彼女はプクっと頬を膨らませラスクを 置いたそしてキリリと顔を引き締めると私 に向き直りちゃんと切を伸ばし た大輔ママ今日はお話があってここへ行き まし た急に改まった彼女につられ私も切を 伸ばし た大輔とは1年くらいお付き合いしてて私 は彼との結婚を真剣に考えています それで先月大輔からプロポーズされて私は いいよって言ったので結婚することにし まし た私は心の中で盛大にずっこけたそれは私 ではなくアリさんのご両親に言うセリフの ような気も するどうにも先ほどから彼女の言葉遣いに いい印象が持てない美しい日本語をとまで は言わないがせめてもうちょっと気の聞い た言葉を選べないものだろう かそれに今日は遅れてきたのだからまずは そこを謝罪するべきなのではないかと思っ たりました一応会う約束まで取り付けて人 に時間を出してもらっているという自覚が ないのだろうが若さゆえに仕方がないと 考えてもいいものか迷った 私はこの雰囲気を壊さないためにひとまず 黙っておきやんわりと反対する胸を告げて その日は帰ってもらっ たしかし後日大輔とよくよく話してどうし てもありさんでないと考えられないとの ことから私は2人の結婚を正式に認めたの で あるその後2人は無事に式を終え大輔の 職場近くのアパートで暮らすことにした らしい2人の結婚生活が順調なよで私も すっかり安心しきって趣味の切り絵に一層 没頭するようになってい たそうしていつの間にか季節が一巡りして また暑い夏がやってきたこの頃アイリさん から同居したいとの電話をもらった私が 驚き理由を聞くとと何でも大好きが移動の 事例をもらい職場が実家の近くになるから だそうだまたアリさん自身も私から料理や 掃除などの家事を教わりたいというの だでも愛里さんあなたの職場からは遠く ならない の私が確認すると思いもよらない返事が 返ってきたあそこはご心配なくちゃんと 仕事はやめてるんで ちゃんとって 何喉の近くまで出かかった言葉を飲み込み 私は合槌を打っ

たそうそうなのね分かった わ私はてっきり2人とも私から離れて 暮らすものとばかり思っていたので最初は 戸惑ったものの開いている部屋はあるため 了承し た部屋は準備しておくから引っ越しのひり が決まったら連絡をちょうだい ねそうして数週間後2人がうへ引っ越して きて同居が始まった私はアイリさんにまず 食後の皿洗いとお風呂掃除洗濯物をお願い することにした最初の23日は進んでやっ てくれていたのだが次第にめんどくさがる ようになっ たありさん食器洗っておいてくれたえ へー今からやろうとしてたところです けど大輔ママやってくれていいです よアリさんは収支スマホから目も指も離さ ずにけだるそうに 言い放つ彼女に任せきりにしておくと昨晩 の食器が翌朝まで残っていることなどざら だったし洗濯物も欲しっぱなしで元の場所 にしまわれていないことも多々あった アイリさんこのタオルは洗面所に置いて おいて ください私がそう指示しても彼女は知らぬ ふりをしてどこかへさっと消えて しまうお風呂の掃除に関しても浴 becauseに汚れが残っていたので 指摘する といちいちうるさい ななどとぼやくのが聞こえてくる 始末教えてほしいと言ったのはどこの誰 だったかショップの店員もやめて専業主婦 になるつもりだから家事は頑張ると 張り切っていたのに愛里さんからは家事を 学ぶという姿勢がほとんど見られなかっ た結果的に私が3人分の家事水治を行う ことになったさらに驚いたことには大と 愛里さんが初めて挨拶に来た日愛里さんが 遅刻をした本の理由が電車の遅延による ものではなかったことが分かったの だ単純に彼女が寝坊をし遅れてきただけの ことだったと聞いた時には呆れて声も出 なかったまた彼らが越してきてからも私は 趣味の切り絵をリビングでコツコツと制作 することはやめなかった無心になれるこの 時間が救いだったのだが切り絵を見た愛里 さんは小馬にするように鼻で笑った何の役 に立つんですか それこの非常識極まりない嫁に対して大輔 がどう思っているのかは分かりかねるが私 が彼女に対して思うところを述べてもバジ 豆腐といった具合 だ母さんあまりカリカリしないでやって よ私根は真面目な人間ですから

そう言って2人はまともに取り合っては くれなかっ た黙々と大きな入道雲のかかったある週末 のことである私が1週間分ほどの荷物を まとめていると実質から出てきた大輔と目 があっ たどうしたのその 荷物大輔は珍しそうに私の荷物の量を眺め た大輔 ちょうど良かったわ母さんちょっと海外へ 行くことになったのお店も休業にしてある んだけど1週間くらいで帰れると思うから お家のことよろしく ねするとその言葉に反応したのは大輔では なくアリさんだった彼女はいつの間にか 大輔の後ろに立っていたの だ1人で海外旅行に行く気です かありさんは信じられないとでも言いた そうに叫んだ私と大輔を置いてずるくない ですかそんな の遊びに行くわけじゃないのよあの ね遊びじゃないなら何なんだ よ大輔ママがいなかったらご飯はどうする の洗濯は掃除は全部私に押し付けるんです かちょっと2人とも話を聞い て俺は仕事してお金も入れてるのにその金 で旅行かよ母さんみそなった よどこへ行くのよ私と大輔も連れて行くの は当然でしょ同じ家に住んでるんだ から私は2人を落ち着かせて事情を説明 しようと試みたしかし彼らのボルテージは 上がるばかりでまともに話すどころでは ないいい加減にし なさいついに私も一括したそれでも2人は 怯むことなく騒ぎ続け愛里さんは1人旅行 はおかしいとまで言い出したこれほど わめく体力があるなら少しは家事を片付け てもらいたいもので あるついに彼女はこんなことまで言い出し た 一子のこと永住すれば帰ってこなくていい ですよ家も店も私たち夫婦が継ぐ わ一瞬私はさっと血の気が引くのを感じた もうこれ以上の話し合いは無駄なのだと 悟ったから だわかりましたアリさんの希望通り家も店 もあなたたちに全て任せることにする わ私は極めて冷静に宣言しその後予定通り に海外へと旅だっ たそれから2週間たち大輔たちから電話が かかってきた実家のはずなのに立ち退きを 迫られているという ああそれ実は ねと私は説明した夫が生前ギャンブルで 借金し土地を家ごと売ろうとしたことが

ありその話を聞きつけた親戚筋が多額のお 金を都合してくれたことなどを明かしただ が夫はとうとう借金を返済することなく多 してしまったそのため私は家と店及びその 土地の権利をその親戚に譲って一応の決着 としてもらっていたの だ本来なら いつまでも住んでいていいお家ではなかっ たのよそれを親戚の方々のご行為で格安の 賃貸物件として契約することでこれまで 生活させてもらっていた のお店はお店の土地とか もお店の土地と建物もそうよそれで私は あの日の話し合いで海外へ移住することに なったから出国前に解約な手続きを済ませ ておいたの よ大輔が絶しているのが電話越しでも 感じ取れたきっと今頃青い顔で立ち尽くし ている だろう私はさらに続けていっ たそれとお店のことなんだけど最近売上が 落ちていたから近く閉店するつもりでいた の嘘それどういう こと電話をスピーカーにして聞いていたの であろうアイリさんが 叫ぶ少し前に近所にできた居酒屋さんにお 客さんを取られてしまったのよ リーズナブルでいいっていうレビューまで ついちゃってて ね私のその一言に2人とも頭を抱えてる 様子が目に浮かん だそんな話聞いたことが ないと大輔は騒ぎ始めるが後の祭りで ある聞かれたこともないし本来なら教える 必要もなかった から私は守国冷静にぴしゃりと言い放ち 切り捨て た大輔ママひどいわよなんで言ってくれ なかったのよ逃げるみたいに海外に行っ たりなんかし てアイリさん誤解よ逃げるためでもないし まして遊びのためでもないの私が海外に来 た本当の理由は霧江の古典を開くためよ はあそうお店によく来てくれていた常連の 蓮見さんが私の切り絵を写真に撮って SNSに投稿したところ海外の アーティストたちから高い評価を得たのだ そしてその投稿をきっかけにハさんの 知り合いの中で個人ギャラリーを持って いる方の目に止まり是非海外のギャラリー で古典をして欲しいというオファーまで いただいただから海外へ来たのだと説明 すると大輔も愛里さんも驚愕してい たあなたが何の役に立つのかと聞いてきた ことがあったわね好きこそ物の上手なれと

いうでしょ私は趣味で切り絵を続けて海外 へ移住することに成功したの よそれから2人は電話の向こうで何か騒い でいたが私は気にせずに通話ボタンを切っ たその後のことは親戚たちから聞いた話だ 大輔たちはなんとか赤字すれすれのお店を 立て直せないかと知恵を絞ったらしいが 最後には畳むことを決め今は様々な手続き に頭を悩ませている らしい通常の会社員の仕事もしながらこれ まで全く手をつけなかったことに手するの だからそれは大変なものだろうまた実家 賃貸の再契約を依頼するためにも本した そうだが親戚曰くまゆさんだから貸してい たという理由で大輔たちと賃貸契約を結ぶ ことはこばだという結局2人は家を 追い出され新しい住居に引っ越したそうだ とはいえ今回のことで2人は引っ越し費用 お店の閉店費用や現状復帰のためのハウス クリーニング代などで結構な額のお金を 消費したようだ生活が厳しくなり愛里さん は専業主婦でいられなくなったため新しく パートを探して働き出した彼女はパートも しながら家事をして水治もしてという日々 にストレスを抱え大輔にもきつく当たる ことが増えたようだ大輔はというと嫁との 仲が最悪になったとぼやいている らしい大輔は皿洗いも風呂掃除もしない から余計にそうなのだろうなと察しがつい た方や私はと言うと海外での古典には多く のコレクターが集まり作品にも次々と 買い手がついた決して安くはないお値段な のにこんな素人の切り絵が売れるなんて夢 みたいだったギャラリーのオーナーさんは こんな細かな素敵な作品はあなたにしか 作れないものだ素晴らしいよと太鼓版をし てくれたハミさんもわざわざ日本から 駆けつけてくれておめでとうと花まで送っ てくれたまたハミさんの進めもあり私は このギャラリーの近くにあるアパートに 曲がりをし活動の拠点にすることにした もう半年もすればお金も溜まって広い ところにも引っ越せるだろうセカンド ライフが海外移住なんて考えて見たことも なかったしまだまだ慣れないことも多い けれどここに来れたことはとても嬉しく 思っている日本にはないおしゃれな石畳を ゆっくりと歩きながら異国の空気を 吸い込む次はどんな作品を作ろうかそんな ことを思いながらからよくステップを踏ん だマナつまみが足りない ぞ私は夫の傭兵に言われた通りつまみを 作って机に運んだはい唐揚げと漬け物ね 揚げたてだからすぐ食べて洋平はすぐに 唐揚げをパクりうわいつにも増して

サクサクじゃんほらみんなも熱いうちに 食べろ嫁がいつも作る得意料理なんだ うまい ぞ傭兵は課長に昇進してからというもの 毎週末部下を自宅に呼んでどんちゃん騒ぎ をしていたそれだけでも嫌になるのに夫 だけでなく部下まで私をこき使うこれ以上 付き合いきれないと私はある作戦を 思いついた部下たちも傭兵に言われるが まま私が作ったつまみに手を伸ばすしかし 部下の1人が唐揚げをしばらく見つめると はっとして叫んだここ れって洋兵の顔もみるみるまさに なるな何してるんだよあら気に入ってくれ たかしら飲み会が楽しいものになるように 私なりに考えたのふざけん なこんなことで余裕がなくなるなんて私は 思わず鼻で笑ってしまったお前早まるなら 今のうちだぞ 洋平らが私を睨んできたため私も 思いっきり睨み返して行ってやったそれは こっちのセリフよこれまでのこと全く反省 していないよねあなたたちとは婚罪一緒に いたくありません さよなら私は記入済みの離婚届けと用意し ていたスーツケースを持ちスタスタと家を 出 た私の名前は武田マナ夫の傭兵とは10年 前35歳の時に結婚した洋平と私は大学の テニスサークルの先輩後輩だ1つ先輩の 傭兵はムードメーカーで後輩の面倒みが 良くサークル内でも人気があっ たまなちゃんこれ1年生の分ねちゃんと 水分取るようにあありがとうござい ます試合や合宿で洋兵はよく全員分の スポーツドリンクを差し入れしてくれた さりげない優しを見せる傭に正直私も他の 女子同様心をときめかせていた時期もあっ たでも外見は普通真面目だけが取りえで 特に面白みもない私と傭兵がつり合うわけ がないそう思った私は学生時代傭兵と絡む ことはほとんどなかっ た大学卒業後私は旅行会社に就職した入社 して3年目に海外旅行ブームが到来し旅行 は大繁盛ありがたいことに給料はボーナス は上がったがとにかく忙しかっ た睡眠時間は毎日3時間休日出勤は 当たり前会社に泊まることもしばしば今 考えるとよくやれていたなと関心するが 当時は毎日がいっぱいいっぱいで今 思い出そうとしても当時の記憶はあまり ないまた独身で身軽だからという理由で私 はは現地調査にも生かされた初めは仕事で あれど海外に行けるということでワクワク したが現地調査はそんなに甘いものでは

なかった正確な情報を短時間で入手し なければならず移動時間やホテルでは ひたすら資料 作成海外を楽しむ暇など全くなかっ た私も結婚して子供ができれば現地調査は 免除されるしそれまでの辛抱だそう思って 当時はひたすら上司の命令に従っていたが 忙しさもあまって結婚どころか彼氏さえも できなかったやがて後輩たちに咲こされ 周りからは独身を貫くキャリアウーマンだ と勝手に持てはやされるよう に田中が今度3級取るらしいから引き継ぎ 頼むよはいお前がいてくれて本当に助かる よ我が者初の女性管理職目指して 頑張れ上司は私をうまく立てて私に どんどん仕事を振った毎日が仕事仕事正直 逃げ出したかったしかし逃げるところも ないし何より仕事を辞めたら私は1人で どうやって生きていくんだそう思うと結局 私は働くしかなかっ たしかしある日私の仕事だけの日々にかか な光が差し込む出来事がそれはちょうど 34歳の誕生日だった1人でで誕生日を 過ごすのにもすっかり慣れてしまっていた 私はいつも通り午後11時頃仕事から帰宅 久しぶりに郵便受けを開き中の郵便物を 取り出したどうでも良い広告が何枚も入っ ているこれを配る人ってどういう モチベーションで仕事しているんだろう そんなことを考えていると広告の間から1 枚のはがきが出てきたえ嘘 でしょ私は思わず声をあげるそれはテニス サークルの同窓会のお知らせだった前回 同窓会があったのは確か4年前この4年で みんなまた変わったんだろう なここ最近仕事のことしか考えていなかっ た私は急にみんなのことが恋しくなった 部屋に入ると私は迷わず参加に丸を つつける私は気分転換を兼ねて同窓会に 参加することにした 同窓会は想像以上に楽しかった34歳に なった私たちは3がもう結婚していた既婚 者組は結婚したことによる窮屈さを嘆き 独身組は取り残されることへの不安を嘆く しかしそれらは全てお酒の力で面白い話へ と様変わり気を使わなくていい間柄で久し ぶりに飲んで話して私はすっかり上期限 だっ たまなちゃんここ座って いい場所を移していざ始まろうとした2 次会で私は後ろから声をかけられた 振り向くと声の主はなんと傭兵だったえは はい先輩来てたんですね近くで飲んで るって連絡来たからさ俺も久しぶりにこの 台の奴らに会いたくなっ

て洋兵はそう言うとテキパキとみんなの 飲み物の注文を取り店員に伝えた 彼はスーツをピシッと着こなしいかにも 仕事ができそうな雰囲気をまっていた先輩 さすがです相変わらず面倒みがいいですね 面倒みがいい俺がせっかちなだけだ よ洋平は笑っ た私は洋平とは大学卒業後は1度も会って いなかった実に12年ぶりの再会だ大学 大学中は全然なかったのにお酒の力なのか それとも年を取ったからか不思議とこの日 はうことなくリラックスして傭兵と話す ことができ た実は仕事がきつく ていつの間にか私は仕事の口まで洋平に 話していた洋平がうんうんと頷いて静かに 聞いてくれるので私はつい長々と話して しまったあすみませんせっかく来てくれた のにこんなつまらない話して私に構わず他 の人のところ行ってください ね話しすぎてしまったことに気づき私は 慌てて謝ったうん俺でよければまなちゃん の話もっと聞くよ話すだけでもちょっとは 楽になると思う から洋兵は優しいまなざしを向ける結局私 は2次会が終わるまで傭兵とずっと2人で 話してい たまなちゃん仕事なんかで自分を追い詰め たらだめだよ少なくともマナちゃんの上司 は間違ってる俺が上司なら後輩1人に そんな負荷をかけたりはし ない帰りは洋平は真面目な顔で言っ たありがとうございます俺マナちゃんを 守りたいって思った え洋兵は立ち止まり私の顔をじっと 見る俺がまなちゃんを守るから俺と 付き合ってくれないかな えなんと私は傭兵から告白されてしまった あまりに突然のことだったため返事は保留 にしてもらったがそれから毎日傭兵から メールが来た内容は頑張りすぎたらだめだ よや何でも話してねなど私が誰かからかけ て欲しかった言葉ばかりいつの間にか私は 兵のことで頭がいっぱいになっていった 先輩ともっと一緒にいたいそう思った私は 傭兵からの告白を受け入れたお互いいい年 だったため結婚を視野に交際しそれから1 年後私たちはめでたく夫婦になったのだっ た結婚したし仕事を少しセブしようそう 思い上司に相談したが35歳で結婚した私 を上司はあまりよく思っていなさそうだっ た これから子供作るのせっかくキャリアを 積んできたのにもったいないな君ならうち の会社の初の女性管理職になれると思った

の に祝福の雰囲気は一切ない上司の態度を見 て私はこの人は部下である私を会社初の 女性管理職にすることで自分の評価を高め たかっただけだと悟ったそしてこの瞬間私 はこの会社を辞める決意をしたのだったで もまだ子供もいないのに結婚してそそう 仕事辞めるなんて傭兵には申し訳ないな 悩んだ挙げ句私はこの気持ちを傭兵に素直 に伝えたすると彼は優しく笑っていっ た俺マナに告白したあの日マナを守るって 決めたんだ俺がちゃんと働くからマナは家 のことをして俺を支えてくれると嬉しい ななんて優しい人なんだろう私は洋平と 結婚して本当に幸せだと実感し たこうして私は13年間勤めた会社を辞め て家庭に入ったわけだが洋平と一緒に 暮らすようになり彼は大学の頃と変わらず 会社でも後輩思いであることが分かった 休日でも傭兵の仕事用スマホにはしばしば 後輩から電話がかかってくるのだごめん ちょっと発生したみたいで会社行ってくる すぐに相談できてそしてすぐに飛んできて くれる先輩がいる陽平の後輩は幸せだろう な自分も傭兵みたいな先輩がいてくれたら もっと仕事を楽しめただろう にたまにそう羨ことさえあったいやいや たられば言っても仕方ないそんなことより も私も何か傭兵の力になれないか なあ私はふとひらめいた小腹が空いた時の ためにサンドイッチ作るねすぐできるから 待っててサンキューじゃあ2人分いい後輩 の分なんだけどもちろん どこまでも後輩思いの傭兵が私は 誇らしかったきっと子供も可愛がって くれるんだろうなこれから家族が増えて みんなで笑っ てその当時私は明るい未来ばかりを想像し ていた しかし10年後の今私はあの頃思い描いて いた幸せな日々とは全くかけ離れた日々を 過ごして いるマナ明日もまた部下が来るからいつも のよろしく な毎週金曜日洋平の口からはこんな決まっ た言葉が出てくるまたいいだろ子供がい ないんだから人が来てくれて賑やかにして くれるってありがたいことじゃない か子供がいないそう言われると私は何も 言い返せなかっ た結婚して私たちは子供を望んだが なかなか授からなかった病院に行くと私は 妊娠しづらい体質であることが 判明42歳までは不妊治療を頑張ってみた がそれでも授からなかったため私たちは

子供を諦めたのだっ たごめんね せっかくマンションも買ったの に子供のことを考えて私たちは結婚して3 LDKのマンションを購入したしかし結局 子供はできずに2人暮らしのまま余って いる部屋を見るたびに私は申し訳ない 気持ちになっ た俺はマナと一緒にいたくて結婚したんだ よ子供がいなくてもいいじゃない か変わらずは優しかったしかしこの優しさ は永遠には続かなかったの だある日洋兵はベロンベロンに酔った会社 の同僚を連れてきたちょっと1人で帰れ そうになかったから打ち止めるわまだ布団 準備して くれる相変わらず面倒みがいいんだなと この時はまだ傭兵のことを素直に関心した のだがこの日を境いに兵はうちに会社の人 を連れてくようになったそして出世して 課長になった今洋平は毎週末部下を家に 呼んで飲み会を開くようになったの だまなつまみが足りないぞ豚キムチ作って くれあと唐揚げも追加 で傭兵は当たり前のように私につまみを 作らせるお酒が入った洋兵は気が大きく なり部下の前で私をこき使った部下を可い がって家に呼ぶだけならいいしかし毎週末 家でどんちゃん騒ぎされしかもコ使われて 私はそんな日々にけが刺してい た洋平の面倒みがよく優しいところが好き だったのに今はそんな気持ちこれぽっちも なくなっ たさらに洋平が私をこぎ使うのを見ていた 部下たちも悪乗りを始め奥さんビール追加 でとまるで私を酒の店員のようにコ使うの だっ た初めは笑顔で対応していた私だが傭兵や 部下の私への態度があまりにもひどく私は 一度本気で怒ったことが あるここは居酒屋じゃないし私は店員じゃ ありません騒ぎたいなら自分たちで準備し てちゃんと片付けまでして ください私はこう言うと自分の部屋に入り 鍵を閉め たさすがにちょっとは反省しただろう しかし翌朝部屋を出て私は目を疑った机の 上には食べかけの料理や飲みかけの勘が置 きっぱなしそしてソファーの上で洋平が いびきをかいて寝ていたちょっと起きて よ私は苛立ち傭兵を無理やり起こすと傭兵 はきょとんとした顔をしていったあ朝か いつの間にかみんな帰ったなまな片付け よろしく はこの人は咲夜私が怒ったことを覚えてい

ないのなんで私が片付けしなきゃいけない の よ私は怒りを抑えていっただって専業主婦 じゃん自分が稼いできているからこんな いい暮らしができるんだと傭兵は当たり前 のように言ったのだ私は傭兵に絶望した 傭兵はすっかり変わってしまったもう かつて私が好きだった傭兵ではないのだ この人にとってこれ以上何を言っても無駄 だと悟り私は黙って後片付けに取りかかっ たのだっ たそれから週末が近づく度に頭痛がした 傭兵の態度は全く変わらずて部下らもまた 調子に乗って私をこき私は抗うことをやめ 無言かつ無表情で対応しただ時間が過ぎを 待った土曜日さえ我慢すれば残りの6日は 解放される昔は毎日あんなにきつい仕事を 頑張っていたじゃないか週1日くらいなら 頑張れる私は自分をこうコし たしかしある日どうしても許せない事件が 起きたこの日も傭兵はいつものように会社 の部下を自宅に呼んで宴会騒ぎをしてい たかき上げ作って てかき上げか結構手間かかるんだよ ねそう思いながらも私は傭兵に言われた 通り汗をかきながらかき上げを作って リビングに運ぼうとしたしかしその時信じ られない光景が目に飛び込んできたなんと 傭兵の横に座っていた若い女性が傭兵の ほっぺにキスしていたのだ洋兵はちょっと 驚いた顔をしたがすぐに余裕の笑を浮かべ 女性の肩を抱いて今度は傭兵が女性の唇に キスしようと顔を近づけたちょっと何やっ てるの よ私は思わず叫んだ周りはしと静まり返り 洋平らは我に帰ったように一瞬ビクッとし て顔を 離す何大声開けてるんだ よ傭兵はあさに不機嫌な顔になり私を睨ん だしかし私もこればかりは許せず負けと 傭兵を睨み返し たいくらお酒を飲んでいても理性は保って ほしいわ社会人としての常識 よすると洋平がふっと 笑うお前もう45だろ嫉妬してるのみとも ない振る舞いして恥かかせるな よ奥さん気量が狭いです ねあろうことか傭兵に続き彼にキスしてき た女性部もをのってきた あああお前がいると気分悪いわ出ていっ て陽平はそう言うとビールを開けて一気に 飲み干した周りが悪乗りし始め出ていけ コールが部屋中に 響く私の怒りは頂点に達し気がつくと自分 の部屋からバックを取り無言で家を出てい

た私は当てもなく夜の街を 彷徨うしばらくして少しだけ落ち着いた私 は漫画喫茶で一晩過ごしたのだっ た翌朝眠りから覚めても昨日の怒りは全く 収まっておらず私はなかなか家に帰る気に ならなかったしかし夕方になりさすがに 自宅に戻ると傭兵は1人リビングで寝転ん でテレビを見ていた部屋を見渡すと昨晩の 片付けはされているちょっとは反省したか な私は洋平に話しかけ た洋平昨日のことで何か言うことない の私は傭兵に謝って欲しかったが傭兵は テレビから視線をそらさず黙った ままねえって ば傭兵の肩をゆすると傭兵は私をキリっと 睨みつけていった うっせえ何よその言い方全然反省してない じゃ ないせっかく心を落ち着けて帰ってきたの にまた怒りが爆発しそうになる私そんな私 に傭兵は1枚の髪を押し付けてきたそれは なんと離婚届けだったしかも傭兵の分は すでに記入済み だ俺はお前を食わしてやってるんだぞ俺の おかげできつい仕事からも逃げられたん だろこれ以上文句言うなら離婚だからな いつでも提出できるように今すぐ記入しろ 傭兵は自分の私に対する態度が間違って いるとは全く思っていなかったこんな人と これ以上一緒には暮らせないわ離婚は望む ところよさすがに口に出しては言えなかっ たが私は黙って離婚届けを記入傭兵は黙っ てそれを机の引き出しにしまい何事も なかったかのようにソファーに寝転んで またテレビを見始め たもうこれ以上傭と夫婦を続ける気は妄 ないずっと子供がいないことを残念に思っ て生きていたがこの時初めて子供がいない おかげで私は何の迷いもなく傭兵と離婚 できるんだと神様に感謝し たそれから私は着々と離婚の準備を進めた のだった翌週傭兵は懲りずにまた部下を家 に呼んだこの間傭兵にキスした女性部が ちらちらこちらを見てしてくるのが分かっ た私は気にしないふりをして傭兵に言われ た通りつまみを 作るうん見た目は 完璧私は出来上がった唐揚げやかき上げ それに漬け物を机に運んだはい唐揚げと 漬け物ね揚げたてだからすぐ食べ て肩を組んでヘラヘラ笑っている洋平と 女性部の前に私は笑顔で皿を置いた平は すぐにに唐揚げをパクりおわいつにも増し てサクサクじゃんほらみんなも暑いうちに 食べろ嫁がいつも作る得意料理なんだ

うまい ぞそう言うと洋兵はかき上げにも手を 伸ばした部下たちも傭兵に言われるがまま 手を 伸ばすしかし部下の1人が唐揚げを しばらく見つめるとはっして叫んだこれ カエルの足だえ 傭兵は驚き口の中のものを一気に飲み込ん でしまったようだゲホゲホ咳き込んだ後 サラの上にある唐揚げを見つめぎーっと 悲鳴をあげるここれももしかしてエビじゃ ないの か洋兵が震えながらかき上げを 指さすこ れってもしかして 稲子部下は稲子と目があったようで顔が みるみる青ざめていったその通りカエルの 足美味しいでしょ稲子もサクサクしていて 人気らしいわちなみにこちらの肉はワニ肉 ね漬け物はごめんなさい板って普通の宅 よ私が1つ1つ説明していると あちらこちらから悲鳴が上がった特に爬虫 類や虫が大嫌いな傭兵は洗面所に駆け込み 何度もうがいをしているそして顔を真っ赤 にして叫んだあな何してるんだよ わざわざ専門店に行って買いつけてきたの よ飲み会が楽しいものになるように ふざけん なカエルや稲子を食べてしまったことが よっぽどショックだったのだろうこんな ことで余裕がなくなる なんて私は思わず鼻で笑ってしまったする と部下たちが傭兵を庇い出す傭兵も部下も 私が一方的に悪いと本気で思っているよう だったこれまで自分たちがしてきたことは 棚にあげて本当にどうしようもない人たち だ部下の1人がこう叫んだ課長はいい人な のに妻だからって調子に乗って最低だ課長 こんな人と別れた方がいいですって他の 部下も一緒になって傭兵に離婚を進め たお前早まるなら今のうちだ ぞ平らが私を睨んできたため私もいきり 睨み返して言ってやっ たそれはこっちのセリフよ全く反省してい ないようねあなたとはこ輪在一緒にいたく ありませんさようなら 私は記入済みの離婚届けと用意していた スーツケースを持ちスタスタと家を出る 京平らは私がここまで準備していたとは 思っていなかったのだろう私の様子を目を 丸くしてただ黙って見ていた はあ終わった わ夜空に浮かぶつきを見て私は久しぶりに 晴ればれとした気持ちになっ た着くのは9時くらいになりそううん

じゃあまた ね私は母に電話した実は両親には全て話し ており離婚して実家に戻ることもすでに 了承済み だお帰り晩御飯食べたのうんまだ残り物 温めるから先にお風呂入っちゃっ て特に何も聞かず普通に接してくれる両親 に私はとても救われ たマナビール飲む だろう兄がお風呂上がりにわざわざビール を持ってきてくれた兄は独身で普段は海外 に住んでいるのだが3日前に一時帰国し しばらく実家にいるのだという 久しぶりに家族4人揃ったなせっかくだ から俺もビールもらおうか なじゃ私 も家族全員揃ったことを記念して私たちは 乾杯すること にいいな家族 ってビール片手に上機嫌な兄の言葉が胸に 響い たお互いの気持ちを尊重しがよくいつでも 帰って来れる場所それが家族だと 思う残念ながら傭兵とはそんな家族になる ことができなかったでもこの10年の結婚 生活が全て無駄だったとは思わないだから またこれから家族に助けてもらいながら再 出発 しようビールを飲みながら私はそう心の中 で誓っ た再出発するためにはまずきちんとと離婚 しなければならない次の月曜日私は早速 動き始めた向かったのは傭兵の会社だ傭兵 だけに問題があるのなら会社にまで来る ことはなかったしかし毎週末うちでどん ちゃん騒ぎを繰り返し私を顎で使う常識の ない部下たちのことが私はどうしても許せ なかったそこで私は会社からその部下たち へしっかり指導してもらおうと考えたので ある 傭兵の会社は創立記念パーティーに家族も 参加できるため私も1度だけ社長や部長ら と挨拶を交わしたことがあったその時に 社長からもらった名刺のメールアドレスに 昨夜ダメもでメールを送るとなんと10時 に来てくださいと返信が来たのださすがに 社長に会うのは緊張したが10時になると ロビーに秘書が迎えに来てくれた秘書に 連れられてで私は社長室へ向かう社長急な お願いに対応いただきありがとうござい ます緊張で私は声が裏返ってしまった いやいや早速だが昨日のメールに添付され ていた動画について詳しく聞かせてくれ ない か実は私は離婚を決意する前からもしもの

時のためにリビングに隠しカメラを設置し ていたのだとして傭兵らが私を顎で使う 様子や傭兵と女性部下がイチャイチャして いる様子を納めた動画を私は咲や社長に 送ったというわけだ彼らに注意しても全く 反省しなかったこと傭兵とは離婚する つもりであることを話すと社長は私に深く 頭を下げ た社員のブレな行為について本当に申し訳 ないこれから重役会議があるのだがこの 動画を裏にも共有していいかなもちろん ですきっちり指導していただけると助かり ますそう言って部下への指導をお願いし私 は社長室を去っ た実家に帰ると兄が出てきたさっき旦那来 たよ え月曜なのに会社は休んだのてかなんで 今日なの昨日は日曜で1日休みだったじゃ ない 疑問ばかり浮かんでくる私の様子に気づい たのか兄が説明してくれた兄が言うには 傭兵は昨日1日私のことを家で待ったが 帰ってこなかったため私が本気で離婚を 考えていることにやっと気づいたとのこと それで今日会社を休んで慌てでここに迎え に来たのだというマナは俺らが守るから 混練罪関わるなどうぞご自由に生きて くださいって伝えてしまいといたぞ 兄に一括され傭兵はうれて帰って行ったと いう ありがとう家族のピンチはみんなで 乗り越えるんだよちょうど帰国してて よかった本当それお兄ちゃん未来わかるの 兄の勘ってやつだ な私たちは顔を見合わせて笑っ た数日後社長から電話があっ たマナさんこの間の件は車内でしっかり 対応することにしました本人にも事実確認 を取ったところです旦那さんにも処分を 下すことになりますがよろしいですか もちろんです私たちはもうすぐに別れます の で重役会議にて傭兵は攻殻処分部下につい ては言及処分が決まったことを社長は教え てくれたさらに数日後兄がどこから仕入れ てきたのか教えてくれたことが ある旦那の浮気相手さんどうした の兄の話によると傭兵とキスした女性部下 には車内に婚約者がいたらしいしかし今回 の件が車内で広まり婚約者からそんな不だ な女との結婚は無理だと破断を言い渡され たそう だ結婚前でよかった私の行動がその婚約者 の男性を救ったってことだよね そうマナは人を救ったんだよ俺の誇り

だ兄が私の頭を撫でる兄のこのポジティブ 思考真似したいなと思うがなかなかすぐに 習得できるものではないのが残念な ところでも兄はしばらく日本にいるようだ しその間にあろうとちょっとした目標が できた離婚については初め洋平は離婚を しっていたしかし離婚に応じなければ裁判 で浮気の証拠を提出して慰謝料までもらう と言って脅すとすぐに折れた私は別にお金 なんていらなかった独身時代の貯金がその まま残っているししばらくは実家に住まわ せてもらえるこれからまた仕事を見つけて 働けば生きていけると踏んでいたそれより も一刻も早く洋兵と離婚して再出発し たかったの だ家を出て2週間 私と平はようやく他人になり私の新しい 人生が始まったのだっ たそれから3ヶ月が経ったまな今日バイト でしょこの前買ってきてくれた芋虫の 唐揚げまた買ってきてよはまってる ね私はあれから珍味料理店で調理バイトを 始めた自分でも笑ってしまうが洋平らに 嫌がらせのつもりで帰るに稲子を料理した のがきっかけだあの時私も味見したのだが それが意外とおいしかっ たこのことは潜入会にとらわれていた自分 を見直すきっかけにもなったそして新しい 世界を覗いてみたいと思ったのだそんな私 を家族は優しく見守って応援してくれて いる母に至っては私と同じく珍味料理に すっかりはまってしまったようだ 俺はカンガルーの肉も結構好きだよ海外 生活が長い兄はさすが1枚上手だった今度 俺が海外いる時遊びに来いようん 行く新しい人生は楽しいことでいっぱいだ 充実した日々を過ごしている私とは裏腹に あれから傭兵は会社で全ての負担を妻に 押し付けた結果爪に逃げられたダメ亭主と 楽員をされ すっかり居場所がなくなってしまった特に 女性社員からは軽蔑され周りから白い目で 見られることに耐えられず会社を退職した そう だ元旦那のどこが良かったのなんか プライドだけは高くて最終職も決まらない ようだ けど傭兵は課長だった自分が忘れられず 最終職先にも偉そうに条件を突きつける ためなかなか次の仕事が決まらないそうだ マンションの労もあるし早く働き始めない とねま俺たちには関係ない けど兄は一体どこからそんな情報を仕入れ てくるのだろう思わず笑ってしまったうん そうね私たちには関係ないよかった早く彼

の本性に気づけ て表と生きている兄のそばにいると私自身 も楽に物事を考えられるようになった 結婚には失敗したけどおかげで私は本当の 家族の温かさに気づくことができたじゃ バト行ってきます行ってらっしゃい気を つけて ね自転車を漕ぎ出すと温かな日の光が私を 包んでくれ た

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